大相撲の横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)が、偉業に挑戦する。九州場所は今日12日、福岡国際センターで初日を迎える。3場所連続休場中の稀勢の里は11日、同所で開催された土俵祭りに参加した。年6場所制が定着した1958年以降で、3場所以上連続で休場した横綱は過去18人おり、休場明け後に出場した場所で優勝した横綱は4人だけ。横綱として初めて迎える九州場所で、09年初場所の朝青龍以来5人目の“復活優勝”を目指す。

 土俵祭りを終えた稀勢の里の表情は落ち着いていた。「身が引き締まる思い。平常心で明日迎えられれば」。秋場所での自身初の全休を含む、3場所連続休場中だが不安は一切ない。そして「しっかり集中してやるしかない」と言い聞かせるように言った。

 全休明けの稀勢の里について、八角理事長(元横綱北勝海)は「初日は難しい。自分の相撲を取り切れるかどうか」と案じた。自身もけがによる3場所以上の連続休場を2度経験。そのうち1回は、初日から14連勝して優勝を果たしている。当時を「『勝つしかない』と開き直ってやりました」と振り返り「自分にプレッシャーをかけずに本場所を乗り越えればいい。次の場所が勝負」とアドバイスを送った。

 春場所で負傷した左上腕付近も、名古屋場所で負傷した左足首も順調に回復してきた。秋巡業も完走して、福岡入り後も関取衆相手に稽古を積んだ。だからこそ「良い状態で九州に入った。しっかり準備ができた」と自信をのぞかせた。師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)も「順調にきてると思う」と背中を押した。

 初日、2日目の取組相手の印象を聞かれた稀勢の里は「集中してやる」と2度繰り返した。優勝、という言葉を自らは口にしないが、多くのファンが待ち望んでいる。58年以降で過去4人いる、3場所以上の連続休場明け後の優勝に向けてまずは今日、節目の幕内700勝で復活ののろしを上げる。【佐々木隆史】