元横綱日馬富士関に暴行された東十両3枚目の貴ノ岩(27=貴乃花)が初場所(14日初日、両国国技館)を休場することが12日、決まった。先場所に続く全休は確実とみられる。取組編成会議を開いた日本相撲協会は診断書を公表した。条件とされた診断書の提出により、全休しても3月の春場所では十両最下位(14枚目)にとどめる特別救済措置が取られる。

 貴ノ岩の診断書は、神奈川県内の病院が今月11日付で発行し、この日までに貴乃花部屋から提出された。暴行が起きた10月25日夜の酒席で負った「頭部外傷」に加え「頭皮裂創痕、右乳突蜂巣炎痕あり。繰り返す頭部打撲は、慢性硬膜下血腫発症の危険性を増すため、受傷後約3カ月程度は頭部打撲を避ける必要があり、1月の就業は困難である」と記載されていた。

 「頭皮裂創痕」は痛々しい写真も出回った、医療用ホチキスで施術されたことなどを示している。「右乳突蜂巣炎痕」は、貴ノ岩の兄アディア・ルブサン氏も証言していた耳の後ろの痛みを指している。診断通りであれば全休の可能性が高く、幕下転落が濃厚な地位。だが、昨年12月の臨時理事会で決定した通り救済措置がとられ、十両最下位として残ることができる。診断書を確認する役割を担う副理事の芝田山親方(元横綱大乃国)は「ちゃんと出ているから何も問題なし」と手順に沿った手続きであると説明した。

 容体が不明だったため、八角理事長(元横綱北勝海)ら相撲協会執行部の親方衆は「とにかく貴ノ岩が心配」と話していた。一方、貴ノ岩の師匠の貴乃花親方(元横綱)は、報道陣には無言を貫いているが、一門の総会では「順調に回復の道をいっております。社会復帰、心の傷まで癒やしてあげたい」と話していた。多くの関係者に処分が出て注目された暴行事件で唯一、進展のない貴ノ岩が再び現れるまでには、もう少し時間がかかることになった。春場所は、負け越せば無給の幕下陥落となる番付での復帰が濃厚となった。

 ◆乳突蜂巣炎痕 耳の奥にある乳突蜂巣の細菌感染症であり、典型的には急性中耳炎の発症後数日から数週間で現れ始める。膿汁(のうじゅう)が貯留した状態で発赤、腫脹(しゅちょう)、圧痛、および波動が生じることがあり、激しい痛みと耳介の変位を伴う場合もある。顔面神経まひや頭蓋内合併症を起こす危険もある。