4場所連続休場明けの横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)は、軍配差し違えによる黒星スタートとなった。新三役の小結貴景勝にとったりで敗れた。

 最後は右手で押し出すはずだった。生きの良さで鳴る貴景勝の突き押し相撲を受け止め、左右に体を変えられても、ついていった。土俵際まで押し込んだ。ところが、伸び切った右手をたぐられた。もつれるように土俵を割った。自分に軍配が上がったが、物言いがつき、左肘が先に落ちたと判断された。土俵下でアナウンスを聞き、苦笑いを浮かべた。

 横綱に昇進した昨年春場所の初日白星を最後に、その後は全休の同年秋場所を除いて初日4連敗となったが、相撲内容はこれまでと違う。藤島審判長(元大関武双山)は「土俵際の詰めを欠いたけど、立ち合いも力強かった。今日みたいな相撲を取れば、いける。先場所よりはるかにいい」と話した。観戦した横綱審議委員会(横審)の北村委員長も「先場所に比べたら、力が戻っていると思わせる相撲だった」と“及第点”だ。

 休場明け、18年最初の1番は嫌な形で始まったが、稀勢の里本人の表情は暗くない。支度部屋で、報道陣の質問に「うん、また明日しっかりやりますよ」「明日は明日でしっかりやるだけです」と単純なセリフをかみしめるように話した。残り14日で巻き返し、今度こそ横綱の存在感を見せるつもりだ。【加藤裕一】