横綱鶴竜(32=井筒)が純白の9連勝だ。平幕の荒鷲の前みつを左、右と素早くとって、何もさせずに寄り切った。大寒波襲来による東京の雪景色に、故郷モンゴルの極寒を思い出し「雪はいいですね。寒いけど」と笑みがこぼれた。1敗は栃ノ心のみとなり、2敗も御嶽海、大栄翔と2人だけ。16年九州場所以来4度目の優勝へ。残り6日も雪のような白星を積み重ねる。

 無駄がない。鶴竜は立ち合いから、荒鷲の左前みつをとり、右前まわしもつかんだ。低い姿勢で、流れるように前へ出た。昨年初場所は初顔合わせで負けた。「あの時はなめてかかってやられました。そういうことがないよう、しっかりと」。会心で真っ白な9連勝。「雪はいいですね。寒いけど、きれいです」。国技館を出ると、雪景色が広がっていた。

 世間が震え上がる大寒波に、郷愁を感じた。「ロシアの寒波の影響で、モンゴルも寒いみたい」。最高気温マイナス20度、最低マイナス40度以下のことがある。「日本は湿気があるけど、それがない。空気が“痛寒い”んです」「壁暖房があって、室内は日本より暖かい。半袖ですよ。でも、壁の中にあるオイルヒーターが時々故障する。そうなると大変」。着太りするほど重ね着し、部屋の隙間に新聞紙をはさみ、戸を布で覆う。子どもの頃、ウランバートル市の自宅マンションに閉じこめられ、学校に遅刻した。「カギ穴の油が凍って」と笑う。カギを差しても回らない。昨年末、子ども2人を連れて帰郷した。雪が降っていた。「子どもは喜んでました。雪見るの、初めてだったと思うから」とうれしそうだ。

 大寒波まで味方につけ、鶴竜は初心に帰った。残り6日で単独トップ。後続は1敗1人、2敗2人。ますます強まる優勝ムード。「ここまではいいです。でも、もっと良くして。余計なことを考えず(自分の心を)コントロールしたいです」。雪のように真っ白な心があれば、雪のような白星が降り積もると信じている。【加藤裕一】