大相撲春日野部屋の傷害事件で、被害者の元力士矢作嵐さん(22)の師匠だった春日野親方(元関脇栃乃和歌)は25日、東京都墨田区の両国国技館で取材に応じ、2014年9月の事件発生後に、当時の日本相撲協会の北の湖理事長(元横綱=故人)らに報告したと明らかにし、自身の隠蔽(いんぺい)を否定した。相撲協会はこれまで公表していなかった。

 スポーツ庁は相撲協会に事件についての経過報告を要請し、他にも公表されていない刑事事件がなかったかについて調べるよう求めた。

 相撲協会の担当者は非公表の理由について、矢作さんと加害者の元力士(24)が16年6月の有罪確定時点で引退していたため「協会員ではない方の判決で、個人情報の観点からも取り立てて公表するものではない」と説明した。

 春日野親方は、北の湖理事長らに報告した時期に関し「(事件後)3カ月とか半年ではない、そんなにかからずに(報告した)」と主張。理事長の他、当時の危機管理担当顧問と広報部長だった出来山親方(元関脇出羽の花)に伝えたとした。春日野親方は16年3月に協会理事に就任し、広報部長を務めている。

 矢作さんは14年10月に元力士を傷害容疑、春日野親方を保護責任者遺棄容疑で刑事告訴した。元力士は傷害罪で起訴され、懲役3年、執行猶予4年の有罪判決が確定。春日野親方は不起訴処分になった。昨年3月には民事訴訟を東京地裁に起こし、春日野親方と元力士に3000万円の損害賠償を求めた。暴行の後遺症で味覚を消失したと訴え、親方には監督責任があったとしている。