大相撲のベテラン幕内力士の豪風(尾車部屋)が21日、39回目の誕生日を迎え、東京・墨田区の部屋で30代最後の一年への思いを語った。

 金足農高から中大に進学して、学生横綱に輝いた02年に角界の門をたたきはや16年。これまでの角界人生を振り返ると、さまざまな思いを胸に土俵に上がり続けていた。「22歳でこの世界に入って17年目になる。最初は自分のためだと思っていたけど、結婚して子どもが生まれたら家族のためにとやってきた。次にファンのためにとやってきた」と、年齢を重ねる事に周囲からの期待に応えようと土俵に上がっていたという。

 ただ最近になり、また気持ちが変化した。次は「協会のためにというのが強い」という。昨年末から角界で相次ぐ不祥事。その対応の悪さに、相撲協会が批判にさらされることもあった。それでも本場所が始まれば、多くのファンが会場へと足を運んでくれている。「協会のためにということなら、お客さんを引きつける相撲を取らないといけない。どんな相撲かと言えば攻撃的な相撲ですね。引いたりはたいたりではつまらない。攻める相撲で盛り上げたい」。172センチと決して恵まれた体形ではなく、年齢も39歳となったが若々しい気持ちを持っていた。

 どんなに若々しい気持ちを持っていようが、いつかは引退の時が訪れる。実は、負け越して十両陥落が濃厚となった1月の初場所後に、引退が頭をよぎったという。「自分と親方はやめる方向だった。親方から『自分のタイミングでいいぞ』と言われた」というやりとりがあったことを明かした。ただ「タイミングが分からなかった。それにいざとなると、これでいいのかという葛藤があった」と、悩みに悩んだ。

 そのタイミングで現れたのが、親交のある横綱白鵬だった。引退するのか、しないのか-。自問自答を繰り返していた時に「スッキリしたか?」と問われたという。短い言葉での問いかけだったが「それを聞いてやろうと思った。使命感みたいなものがあった」と、再び気持ちを奮い立たせて、土俵に上がることを選択した。

 今の目標は、白鵬の引退を現役力士として見届けることだ。20年東京五輪まで現役を続けることを公言している白鵬。「その時は自分は41歳なんですけどね」と高いハードルではあるが「自分が歳が上だけど現役として引退するのを見たい。幕下の時から話していたしね。俺も20年まで戦うぞという思い」と、誕生日に気持ちを新たにした。