新大関栃ノ心(30=春日野)が白星発進した。平幕の勢を絶対的武器の左上手で捕まえ、寄り切った。師匠・春日野親方(元関脇栃乃和歌)からもらった3本目の締め込みをお披露目。場所入り時に着る染め抜きも新品で、背中に巨大な故郷ジョージア国旗をデザインした。大関仕様の栃ノ心が平成以降、02年初場所の栃東、06年夏場所の白鵬に次ぐ12年ぶり3人目の“新大関優勝”へ滑り出した。

 大好きな風呂で15分も勝利の余韻を味わい、栃ノ心は支度部屋に戻ってきた。新大関場所を白星発進。床山に髪を結ってもらいながら、何度も笑みがこぼれた。「気合は勝手に入るよ。気合入らないと勝てないからね。プレッシャーはあったけど、相撲をとってる間は忘れてるね」。

 女子プロゴルファー比嘉真美子との婚約を明かし、気合十分の勢にも危なげない。立ち合いは胸で当たって即、左上手でまわしを取った。「とれたらね」と絶対的な武器を離さず、右四つから寄り切った。腰には場所で初披露した紫の締め込み。稽古場でならし、初めて相撲で使った。

 師匠の春日野親方に譲り受けた3本目。5年前の名古屋で右膝靱帯(じんたい)を断裂後、復活を期し、1本目は紺、2本目はグレーのものをもらい、使ってきた。3本目は、6月12日に故郷ジョージア凱旋(がいせん)から再来日後にもらった。

 「もらうタイミングを(探して)ね。稽古場で締め込みの話になったから“チャンスだ”と」。師匠に「ごっちゃんです!」と頭を下げた。候補は数本あったが「一番きれい」と選んだのは、大関の夢破れ関脇止まりだった師匠が晩年に締めたものだった。

 夏場の場所入り時に着る、着物代わりの「染め抜き」も新品だった。ジョージア国旗を背中一面にあしらうデザインで、こちらも再来日後に注文した。「国旗、でかすぎたね。(もう1つ肝心な模様の)オオカミが帯に隠れちゃう」。だが、まんざらでもない。

 師匠の夢を身につけ、故郷の応援を背負う。「特別なことはしない。いつも通り」が口癖だが、姿はきっちり大関仕様。新しい栃ノ心が、力強い1歩を踏み出した。【加藤裕一】