場所前は好調が伝えられた、1人横綱の稀勢の里(32=田子ノ浦)が、よもやの連敗スタート。約2年ぶりの対戦となった東前頭筆頭の妙義龍(32=境川)に寄り倒され、早くも金星を配給してしまった。

役員室でテレビ観戦した協会トップの八角理事長(元横綱北勝海)は、戦前から「妙義龍は、しつこくしつこく2本差すのを狙うだろう。稀勢の里からすれば左さえ差されなければというのが(勝算が)あるだろう。押し込んだ方が差しやすい。しつこくできるか」と見通していた。実際に、その通りの我慢比べの展開となり、妙義龍がもろ差しに。根負けしたかのように、稀勢の里が強引な小手投げを打ったことで相手を呼び込む形となり、背中から寄り倒された。

勝負が決まると、八角理事長は「あそこは辛抱がな。投げを打って自分(の体)を軽くしてしまった。辛抱負け」と稀勢の里の敗因を語った。逆に妙義龍には「右さえ差せれば(勝算あり)というのがあっただろうが(2本差しても)持って行く力はなかった」とし、そこで稀勢の里の強引な投げが出たことで「稀勢の里が動いてくれたことで(体が)軽くなり持って行けた」と勝敗を分けたポイントを指摘した。

また土俵下で審判長を務めた、審判部の錦戸副部長(元関脇水戸泉)は「稀勢の里は立ち合いから腰が高かった。もっと思い切ってガツンと当たればよかった。胸も反ってアップアップだったね」と体勢の悪さを指摘。相撲全体も「体と気持ちの歯車が狂ったのかな? 普段あんな相撲は取らないのに。投げも前に出ながらならいいけど、攻められての投げは強引」と分析。場所前は報道を通じ、好調だったと認識していただけに「せっかく優勝のチャンスだったのに。何とか盛り返してほしい」と今後の奮起に期待していた。