ラーメン効果は絶大だ。関取として2年半ぶりに本場所の土俵に上がっている、東十両13枚目の豊ノ島(35=時津風)が早くも5勝目(2敗)を挙げた。

この日は西幕下2枚目の彩(26=錣山)と対戦。ここ2年間の幕下時代に3度対戦(2勝1敗)している相手を、鋭い踏み込みで立ち合いから先手を取ると、左をのぞかせながら押し込む。左に回り込もうとする彩を、常に正面に据えて追い込み、最後は相手の右脇腹あたりにあてて押し出した。

当初のもくろみは「(相手は)動きがいいので、当たって左を入れて密着しながら」と接近戦を想定していた。それでも体が反応し動いてくれた。「離れても慌てず圧力をかけていけたから良かった」。この日も動きに迷いがなかった。ひたすら前に押して出る相撲。それは幕内上位で活躍していた頃の、本来の自分の相撲ではない。考えを改められたのは、辛酸をなめた幕下の2年間でだった。「初心に戻って(前に出るのは)相撲の基礎。それができている」と満足そうだ。

4日目に今場所初黒星を喫して「験直し」に部屋への帰りがけ、ラーメンを駆け込んだ。2敗目を喫した前日6日目も同じ。今度は店を変えた。その名も「達磨(だるま)」。転ばないことから縁起のいいとされることにあやかった。「七転び八起き。自分もダルマみたいな体をしているし」。

そしてこの日は、勝ったから足を運ぶ必要はない…と思いきや「今日も行きますよ。今日は勝ったから『験直し』じゃなく『験担ぎ』で。担げるものなら何でも担ごうと思うんで」。帰りがけには、館内で売っている梅ケ枝餅と勝栗を、これも験担ぎで買うほどの念の入りよう。ただ小腹がすいているだけ? という問いかけにも「それで勝てるならいいじゃないですか」と笑いながらご機嫌の様子で引き揚げた。