東前頭15枚目の千代の国(28=九重)が、全勝の横綱白鵬を追走する1敗を守った。明生をはたき込みで破り、大関以下で今年最初の勝ち越しを決めた。昨年10月15日に、第1子となる長女の実采(みこと)ちゃんが誕生。さらにスピリチュアルカウンセラーの江原啓之氏から、飛躍に太鼓判を押されるなど発奮材料が重なり、優勝争い単独2番手と好調を維持している。

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目の覚めるような低くて鋭い立ち合いから、千代の国が主導権を握り続けた。頭でぶつかり、左のど輪でのけぞらせるとすぐ前に出た。明生のいなしに左脚1本で残ったが、攻め続けていた分、余裕はあった。すぐに反撃し、たまらず前のめりに出てきた相手をはたき込み。今度は右脚1本で闘牛士のようにヒラリとかわした。剛と柔が交錯する鮮やかな白星に「しっかりと前に出られた。(今場所は)充実している」。12勝で敢闘賞を受賞した昨年夏場所以来、8カ月ぶりの勝ち越しに笑顔だった。

昨秋に実采ちゃんが誕生し「いろんな人に『子どもが生まれると変わる』と言われたけど、いいもんですね」と、甘いマスクをほころばせた。洋服を着替えさせるなど、面倒を見る中で「3カ月ですが、たまに笑ってくれるので、それがうれしくて」とデレデレだ。

これまでは、昨年名古屋場所13日目から通算15度目の休場となるなど、番付を上げては故障で下げるという繰り返しだった。師匠の九重親方(元大関千代大海)は「子どもが生まれて頑張ろうとし過ぎるのが心配だった。いいものは持っている。精神面が大事だと分かってきた」と、家族が増えたことによる効果を話す。千代の国も「子どもの記憶に残るころまで元気に取りたい。あと5年といわず、もっと」と、目標ができて視野も広がった。

今場所初日の数日前、師匠の知人を介して部屋に初めて来た江原啓之氏から、全力士の中で「一番輝いている」と飛躍を予告された。「三役に少しずつ近づきたい」。長期的な目標の前にまず新三役。そのためにも優勝争いから後退するつもりはない。【高田文太】