貴景勝の母校、埼玉栄高は高校相撲界の超名門。高校横綱の元前頭栃栄が93年初場所で初土俵を踏んで以降、角界には多くの力士を輩出してきた。現役力士だけで10人の関取がいる。教え子では2人目の大関輩出となった貴景勝の恩師、山田道紀・相撲部監督(53)が日刊スポーツに手記を寄せた。

 ◇  ◇  ◇

大関昇進おめでとう。サカエ(埼玉栄高)では豪栄道に続く大関。千秋楽は祈るような思いだった。1横綱2大関を倒して、白鵬関にもいい勝負をしていた。昇進に文句はないはず。今場所は前頭2枚目以上にOBが5人いて、普通ならこんなことはない。指導者として、本当に幸せなことだと思う。

インタビューでは感情を表に出さないけど、性格は明るくておしゃべりで、とても繊細。豪栄道も同じで、本当はそんなに強い子じゃない。今場所の後半は思うような相撲が取れなくて、苦しかったんじゃないかな。心身ともに疲労があったようにも見えた。中学横綱として高校に入学した時はやんちゃで、上級生に敬語も使えないような状態だった。はっきり言っておこちゃまだったね。寮の部屋は1部屋につき各学年が1人ずつ過ごす環境で、上下関係がしっかりしていた。そこであいさつはしっかりやるとか、食事を終えたら箸を置くとか、人間として芯となる部分を徹底させてきた。感謝の気持ちと思いやり。それが一番大事だから。

横綱が見える番付になるけど、まだ先のことを言える段階ではない。ただ、地位が人を育てるという言葉があるように、大関になったら一皮むけるはず。高校で教え続けてきた「一寸先は闇」という言葉を、これからも大事にしてほしい。(埼玉栄高相撲部監督)