西前頭2枚目の朝乃山(25=高砂)が、無敗の横綱鶴竜を破り、初金星を挙げた。得意の右四つから寄り切る完勝で3勝2敗とした。

7月の名古屋場所で横綱に初挑戦したが白鵬、鶴竜に連敗。「三度目の正直」で、幕内通算100勝の節目の白星に花を添えた。5月の春場所で初優勝した大器が、来場所の新三役に向けて難関を突破した。全勝は関脇貴景勝と前頭隠岐の海の2人となった。

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初金星は完勝だった。最初から最後まで流れは朝乃山だった。立ち合いで右を差すと圧力をかけて前進。苦し紛れに打ってきた鶴竜の投げに乗じ、左上手をガッチリとつかんだ。土俵際で、再び投げに活路を見いだそうとした横綱を寄り切る、万全の取り口だった。今場所はすべて三役以上を相手に序盤戦を3勝2敗。夏場所では横綱と対戦がないまま初優勝したが、強さが本物であると証明した。

「金星というより、前に出て自分の相撲を取れて、横綱に勝てたことがうれしい」と、少しほほ笑んだ。初めて場内に、座布団を舞わせたことにも気付かないほど「緊張はした」と認める。それでも白鵬、鶴竜に連敗した横綱初挑戦の先場所よりは冷静。「思い切っていこうと決めていた」。ここ一番の時に繰り出す、頭からぶつかる立ち合いで自分にムチを入れていた。

今場所前は、初めて左脚の蜂窩(ほうか)織炎を発症するなど万全ではなかった。新番付が発表された8月26日以降、相撲を取る稽古ができたのは、わずか3日。稽古総見にも出稽古にも行けず、39度の発熱や歩くことさえままならない痛みに苦しんだ。「不安と焦りしかなかった」。そんな中、部屋のおかみさんが青森県から取り寄せた、炎症などに効果があると言われる黒ニンニクをもらった。周囲の支えと、夏巡業で稽古を続けてきた実績に後押しされた。負けた2番も、前に出て自信を取り戻していた。

今場所は同じ富山県出身の人気ユーチューバー「はじめしゃちょー」から、15日間通しで懸賞がかかる。ユーチューバーからの懸賞は相撲界初。新時代を切り開く人物に興味津々で「場所が終わったらぜひ会いたい」と話す。実現するなら初金星に加えて三賞、さらには来場所の新三役…。大量の手土産を持参し、角界の顔の一人として初対面するつもりだ。【高田文太】