小結北勝富士(八角)が「幸せもの対決」を制した。大関高安を押し出して3連勝。武器のおっつけで高安戦の連敗を3で止めた。場所前に婚約を発表した者同士の一番は、返り三役の27歳に軍配が上がった。

来年1月の初場所前に婚姻届を提出する予定。同世代との出世争いを繰り広げながら、悲願の初優勝を目指す。全勝は正代、若隆景の平幕2人のみ。横綱白鵬、大関貴景勝らが1敗を守った。

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握った右手を額に当てるルーティンで、北勝富士が呼吸を整えた。にらみ合うように腰を下ろし、踏み込んだ立ち合い。高安の強力な右のかち上げを、利き手ではない左おっつけではねのけ、大関を横向きにさせた。「感覚的にはいなしたと思ったけど…。付け人に聞いたら『しっかりおっつけてますよ』って。バチッと決まりましたね」。左差しを警戒して右から攻める意識だったが、予想以上の威力が好調の証しだった。北勝富士は「これで親方に怒られない」とニヤリ。師匠の八角親方(元横綱北勝海)は「いつも高安にははじき飛ばされているが、当たり負けしていない」と弟子の成長を評価した。

10月に一般女性の中山真美さん(31)との婚約を発表した。「2人分頑張る」と、一家の大黒柱となる自覚は十分。高安も10月31日に記者会見したばかりで「お互い生きるか死ぬか(の戦い)」と、相手の気持ちを理解した上でぶつかった。

場所前には真美さんと、大好きなミュージカル「ライオンキング」を鑑賞した。場所は博多の複合施設「キャナルシティ」の劇場で、通算8度目の鑑賞。帰京した真美さんとしばらく会えないが、連絡は毎日取っている。就寝前に90分間電話することはざらで「話が尽きないんですよね」とのろけた。

三役は新小結だった春場所以来だが、1年以上幕内上位で戦ってきただけに「相手は変わらないから関係ない」。出世を争う関脇御嶽海、小結朝乃山とは仲もいいが、ライバル意識も強い。9月の花相撲のときには御嶽海に「(優勝未経験は)あとはお前だけだな」と声を掛けられ、闘志に火がついた。「この3日ずっと内容がいい。同じことを繰り返したい」。公私充実の北勝富士が、九州場所で旋風を巻き起こす。【佐藤礼征】