見違えるように強くなった正代の立ち合いの当たりに、今場所の対戦相手も面食らってるかもしれない。

胸を出しながらの踏み込みは変わらないが、強さが違う。これまで7連勝中だった貴景勝でさえ圧力に負けて後退した。押し相撲は、押されるほど嫌なものはない。四つ相撲なら流れの中で体勢を整えられるが、押し相撲は流れを最初から作り直す必要がある。さらに「これはいかん」と精神的な焦りも生まれる。正代にすれば付け入るスキができた。押し返されたが土俵の後ろには余裕がある。相手との距離が開くから、下がりながらでも貴景勝にまともに押されていない。右に回り込む余裕もある。足がついていけない大関を突いたのは自然の流れだ。立ち合いの強さに加え、前傾姿勢で押し込めるのが今場所の正代の強み。先のことは考えずにこの日のような相撲に徹することだ。(高砂浦五郎=元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)