苦しい体勢で1分以上、粘りに粘った。新大関朝乃山は「絶対に負けない気持ちだった」。

霧馬山に立ち合い、うまく左上手をとられた。右を差したが半身で、相手の攻めを浴びた。攻勢を受け止めてしのぎ、最後は苦し紛れに左を巻きかえてきたところを逃さず、一気に出て寄り切った。

「相手にいいところをとられた。攻められたのは反省。巻きかえにきたところを狙ってはいないが、体が反応した。体がしっかり動いてくれている」

「負けられない」大関の自覚が、不利な形を覆す力をわき起こす。序盤5日間を「自分の中で緊張感があって、その中で体が動いて相撲がとれている」と振り返る。その緊張感を「期待に応えたいので」と表現した。新型コロナウイルス禍で開催された異例の場所。人数制限はあっても、場内に観客がいる。新大関に注がれる熱い視線。その期待に応えたい思いが、粘り強い相撲につながっている。

5日目の7月23日は来年、延期となった東京オリンピック(五輪)の開幕日となる。朝乃山は「自分もアスリートとして、プロとして勇気と感動を土俵の上で伝えたい」。1年後はもうひとつ上の番付で。周囲も描く期待実現へ、白星を重ねていく。