関脇正代(28=時津風)が初日から無傷の関脇御嶽海に土をつけ、1敗を守った。相手の圧力をしのぎ、反応良く突き落として関脇対決を制した。初場所では千秋楽まで優勝を争った実力者。場所前には地元熊本が豪雨被害に見舞われた。被災者を勇気づけるためにも、後半戦に向けて優勝争いに名乗りを上げる。全勝は横綱白鵬と新大関朝乃山の2人。1敗は正代ら3人となった。

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大関候補同士の一番は、正代に軍配が上がった。正代は立ち合いで取られた前みつを振りほどき、左のおっつけで御嶽海の出足を止めた。少しのけ反ったが、回り込んで突き落とし。「土俵際の勝負が2番続いて、なるべく下がらないようにと思っていた」。6、7日目と押し込まれながら土俵際で逆転。僅差で白星を拾ってきたが、この日は土俵の中央で勝負を決めた。

奮起の理由がある。場所前の7月上旬、出身の熊本を中心に九州で豪雨被害があった。「まだ地震の傷痕も残っている。自分にできることがあるんだったら率先してやっていきたい」。16年の熊本地震の際は、震災の影響を受けた小学校や仮設住宅などを慰問。現在はコロナ禍で帰省しにくい状況だが「自分の相撲を取り切って地元の人が喜んでくれるんだったら、こんなにうれしいことはない」と、土俵で勇姿を見せる自覚をにじませていた。

2場所連続で関脇に在位し上位の常連となりつつあるが、おっとりした性格は変わらない。外出自粛期間中、自身の個室にあるテレビを「見ないならください」と部屋の若い衆に“強奪”された。「小さいテレビだったので。まあいい機会でしょうか」。怒らず威張らず、小さいことを気にしない。

今後は上位力士との取組が増える。「その日1番できる相撲をしたら成績はついてくる」。無欲を強調する熊本の星が、後半戦に向けて主役候補に躍り出た。【佐藤礼征】