大相撲初場所で初優勝した大栄翔が強く推す「デニーズ朝霞駅前店のオニオングラタンスープ」を食べてみた。

きっかけは3日のこと。大栄翔が地元の埼玉・朝霞市役所を表敬訪問し、報道陣とのやりとりの一部で、「駅前のデニーズは日本一おいしい。いろんなデニーズを食べ歩いているけど、特にオニオングラタンスープです」とPRしていた。そこまで言うならと思い、後日、デニーズ朝霞駅前店を訪れた。

朝霞駅南口を出ると、同店はすぐに見つかった。窓際の席に案内されると、見晴らしがいいことに気付く。店舗が2階にあるため、広い窓から南口のロータリーが見渡せ、東武東上線の電車も見えた。

メニューを広げて、目当てのオニオングラタンスープを探した。そこには写真付きで、こう掲載されていた。

「オニオングラタンスープ~淡路産たまねぎ使用」349円(税込383円)・148kcal・食塩相当量1.7g・食物繊維1.1g・糖質13.0g」

注文するとほどなく、店員さんが「お熱いのでお気をつけください」と一言添えて持ってきてくれた。

ここからは食リポだ。

直径約10センチの赤い陶器に入ったスープをまず一口。有名な淡路産たまねぎが、チーズとともに溶け込んでいる。オニオンの程よい甘味がうまい。スープには、薄切りのパンが浮かんでいる。パンの上には少し焦げ目がついたチーズがとろっと乗っている。スプーンでパンをちぎり、スープをひたして食べる。うまい。チーズのコクとオニオンスープの甘味がからまった。この時期に食べると、体が温まる。イチオシの理由は、よくわかった。

会計後、店員さんに少し話をうかがった。大栄翔が同店のオニオングラタンスープを話題にしたことは伝わっており「ニュースになってましたね。うれしいですよ」と顔をほころばせ「その後、これを作ったんですよ」とレジ前のチラシを指さした。見ると「あの!朝霞市出身力士も大好きなオニオンスープ」とある。持ち帰りできる冷凍されたオニオンスープ(1袋211円)だった。パンとチーズは入っていないが、湯せんすれば同じスープが家庭で楽しめるという。

もちろん、デニーズは店舗が異なっても味は同じ。家族や友人たちとの思い出が重なってこそ、大栄翔にとっては「日本一」なのだろう。ちゃんこは相撲部屋で食べるとひときわおいしく感じるように、大栄翔の地元だと思えばひと味違う。

商店街を歩くと、大栄翔優勝をたたえるチラシが目につく。ある店では「自分は大栄翔の後援会に入ってるんですよ」とか「大栄翔のお母さんがこの前、あそこの接骨院に行っていた」などと、微妙な個人情報が出てくる。地元に愛されていることがよく分かった。

かといって「大栄翔フィーバー」でもなければ、「地元が大盛り上がり」しているほどではない。コロナ禍にあるためパレードもできず、「地元の人たちがささやかに喜んでいる」という表現が適切だろうか。

殺伐としたニュースが多い中、大栄翔の素朴な地元愛にホッとさせられた。【佐々木一郎】