横綱白鵬(36=宮城野)が、土俵人生最大の正念場を迎えた。大相撲春場所3日目の16日、日本相撲協会に「右膝蓋大腿(しつがいだいたい)関節軟骨損傷、関節水腫で手術加療を要する。術後、約2カ月のリハビリテーション加療を要する見込み」との診断書を提出し、5場所連続休場となった。師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)によると、横綱自らが7月の名古屋場所で進退を懸ける意向を初めて示したという。横綱鶴竜も休場しており、5場所連続で横綱不在となった。

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白鵬が、背水の覚悟を示した。自ら「名古屋で最後を懸ける」と進退に言及した。宮城野親方が明らかにした。白鵬が進退を懸ける意思を明らかにしたのは初めて。

昨年春場所以来45度目の優勝を目指した今場所。4場所連続休場明けから復帰し、初日に初場所優勝の小結大栄翔、2日目に平幕の宝富士を下して2連勝発進とした。幸先の良いスタートを切ったと思われたが一転した。昨年8月に手術した右膝の状態が思わしくなく、5場所連続休場に追い込まれた。

宮城野親方によると、膝に水が慢性的にたまる状態だという。医師から「この状態で取ったら相撲が取れなくなる」と言われたと説明。2日目の取組後には、懸賞を受け取る際にそんきょをし直すなど、明らかにぎこちない動きを見せていた。今月中にも、右膝を手術する予定で、5月の夏場所出場は厳しい見通し。7月の名古屋場所を見据えているという。

度重なるケガで、ここ数年は休場が目立っている。昨年11月場所後に定例会を開催した横綱審議委員会(横審)は、白鵬らの18年九州場所からの2年間の成績に注目。12場所中で皆勤は4場所だけだったことから、引退勧告に次ぐ重さの「注意」の決議を、横綱鶴竜とともに下された。

しかし、1月には新型コロナウイルス感染で初場所を全休。今場所で復活を目指したが、さらに厳しい立場に追い込まれた。宮城野親方は「今場所はどうしても出ないといけないと思って、精いっぱいやった結果。本人が1番悔しがっている。手術をして再起を懸ける」と弟子の気持ちを代弁した。

場所前の11日には36度目の誕生日を迎え、今場所で魁皇に次ぐ2人目の幕内在位100場所目に到達した。数々の金字塔を打ち立ててきたが、11日に電話取材に応じた際には「もう10日目を過ぎている。残りはわずかだと思う」と力士人生を本場所に例えていた。その終盤戦。ついに覚悟を決めた。【佐々木隆史】

▽八角理事長(元横綱北勝海)「きのう(2日目)懸賞をもらう時の動きが変な感じで、どうかなと思ったけど、やっぱり膝をやってたんだね。(白鵬の右膝手術について)前向きな手術だと思う。このままじゃ、終われないという気持ちだろう。横綱を10年もやれば、今まで、こういうケガがなかったのが不思議なぐらい。あったのかもしれないけど。(出場する力士は)横綱不在をチャンスと思って。自分が上がるんだ、という気持ちを前面に出していって欲しい」

▽幕内後半戦の伊勢ケ浜審判長(元横綱旭富士)「(白鵬の)休場は仕方ないが、横綱として調整が長い間うまくいっていないのはどうかと思う。2日間の動きは良かったけど相撲は雑だった。残りの大関に優勝を目指して頑張って欲しい」

◆白鵬の主な1位記録

通算勝利 1172勝。

幕内勝利 1078勝。

横綱勝利 884勝。

横綱在位 81場所。

横綱出場 1004回。

横綱連続出場 722回

幕内優勝 44回。

年間最多勝 10回。

全勝優勝 15回。

連続2桁勝利 51場所

<横綱不在直近4場所の大関陣>

▽20年7月場所 新大関朝乃山が12勝で優勝次点。貴景勝はかど番を脱出した翌12日目から休場。

▽同年秋場所 貴景勝が12勝で優勝次点。朝乃山は初日から3連敗も立て直して10勝。

▽同年11月場所 朝乃山が3日目から、新大関正代が5日目から休場も“ひとり大関”貴景勝が13勝2敗で、決定戦で照ノ富士を下し大関として初優勝。

▽21年初場所 綱とり初挑戦の貴景勝は初日から4連敗の不振で、2勝7敗の10日目から途中休場。正代、朝乃山はともに11勝でかど番脱出。