大関照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、横綱昇進にまた1歩前進した。自己最長となる初日から12連勝。懐に入り込もうとする新小結の明生を、左から抱えてきめ倒し、3場所連続5度目の優勝に向けて突き進む。横綱白鵬も全勝をキープ。残り3日間で後続とは3差になった。千秋楽は白鵬-照ノ富士の直接対決が確実な状況で、優勝の可能性は実質的にこの2人に絞られた。

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気迫十分だった。照ノ富士は立ち合い当たって抱え込めなかったが、慌てずに構えた。左右で張って右を差してきた明生をつかまえ、左で引っ張り込むと照ノ富士の体勢。のし掛かるように、明生をきめ倒した。「落ち着いて取れて良かったです。一生懸命やってきたことを信じてやるだけだった」。自己最長となる初日から12連勝。自信たっぷりにうなずいた。

“同期”との一番に感じるものがあった。相手の明生は、10年前の11年技量審査場所でともに初土俵を踏んだ間柄。相撲教習所の稽古場で何番も肌を合わせてきた。過去5回の対戦経験があるが、互いに役力士として顔を合わせるのは初めて。「(部屋の)合宿にもよく出稽古で来ていて、励み合ってきた1人。そういう意味で(明生が)上に上がってきたのはいいこと」と歓迎した。

優勝の行方は照ノ富士、白鵬の一騎打ちなった。両膝のケガや内臓疾患などに苦しんで、3年前の17年秋場所で大関から陥落。一時は序二段まで番付を落とし、稽古場に姿を見せず、自宅でふさぎ込んでいた時期もあった。幕下陥落時は師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)に何度も引退の意思を伝え、そのたびに引退を引き留められた。名古屋は、その師匠が34年に綱とりを成就させた場所。残り3日で、師匠に最高の恩返しを果たす。【佐藤礼征】

▽幕内後半戦の高田川審判長(元関脇安芸乃島) 白鵬は落ち着いて攻めていた。盤石ですね。照ノ富士も前に出て最後まで抑え込んで逃げられないようにしていた。こちらも盤石で力強い。(優勝争いは2人に絞られたが)また残り3日ありますから。