結びの一番で横綱照ノ富士(30=伊勢ケ浜)が敗れ、混戦を自ら招いてしまった。2番前でトップを並走していた関脇御嶽海(29=出羽海)が敗れたため、結びの一番の土俵に上がった時点では、ただ一人の1敗だった。ところが自身が敗れたことで、平幕の阿炎(27=錣山)を加えた3人が2敗でトップに並ぶという混戦となった。

立ち合いで明生の、下から突き起こすような強烈なぶちかまし。右ののど輪押しも強烈だった。これで照ノ富士の上体がのけ反る。そんな不十分な体勢ながら、ここから押し負けまいと照ノ富士は前に出たが、明生の下がりながらの肩透かしに目標を失うように土俵下に落ちた。

正面土俵で審判長を務めた高田川審判部副部長(元関脇安芸乃島)は「横綱は焦って出た。いつもは自分の形になって出るけど(この日は)前みつを取って強引に出過ぎた」と説明した。相手を組み止めたり、引っ張り込んで自分の体勢に持っていくのが照ノ富士の相撲だが、この日ばかりは焦りがあったのか、不十分ながら慌てて出てしまった印象は拭えない。「いつもと違う戦いだった」と付け加えた同審判長は、三つどもえの優勝争いになったことに「面白くなった」と残り3日を展望した。