土俵の修復に、アサヒビールのビール瓶が活躍した。千代大龍が妙義龍に押し出された後、右膝から倒れるかたちになり、土俵の一部を破壊。すぐさま、呼び出しがビール瓶を使って土俵を直した。

角界では古くから、土俵築(どひょうつき)の道具として、ビール瓶が用いられている。銘柄はほとんどアサヒビールであることも、好角家によく知られている。

三役呼び出しの重夫(56=九重)は「ビール瓶は、持ちやすく、重さもちょうどいい。キリンのビール瓶は薄くて割れやすいので、キリン以外を使っています。サッポロでもサントリーでもいいのですが、アサヒを使っていますね。地方場所の時は、ビールケースに入れて、道具の1つとして送っています」と説明した。

土俵築は呼び出しの力仕事。ビール瓶は、土俵の俵を形作る時に使われるが、土俵の土を固める際にも用いられる。2日目は土俵の上がり段が壊れたが、大きな道具では固めにくい箇所でも、ビール瓶が重宝する。重夫は「ビール瓶でたたくと土俵に艶が出る。万能の道具です。いつから使っているか分からないけど、私が入門してからずっと使っています」とも付け加えた。

土俵作りにキリンの瓶は用いられないが、もちろんビールの味が劣っているわけではない。ちなみに、重夫に「好きなビールの銘柄は?」と聞くと「お酒は飲まない。顔に似合わず、下戸なんです」との答え。ビール瓶は、飲む時でなく、たたく時にしか持たないようだ。【佐々木一郎】