若隆景は迷うような相手ではないので、どう考えても当たらなければいけないのに隆の勝は当たれなかった。おそらくスピードのある若隆景の速さを、どう補えばいいのかで迷ったと思います。せっかく今までの攻めが良かっただけに実にもったいない。優勝が頭にちらついたのでしょう。私事で恐縮ですが、5回優勝した中で優勝を意識したのは1回だけです。あとは、その日の一番をどうしようかを考えるだけで気が付いたら優勝していました。その精神状態をいかに保つか難しいところです。

照ノ富士は、さすが横綱です。貴景勝も横綱を泳がせようと必死でしたが、全く下半身が崩れなかった。押し相撲相手に3敗していますが、その相撲を参考に悪いなりに、力が入らないなりに、どう防げばいいか本場所の土俵を稽古にして学んでいます。これが照ノ富士と、それ以外の力士の差だと思います。優勝争いは横綱が1歩リードでしょう。隆の勝には何とか切り替えてもらいたい。佐田の海は今場所、当たってから腰をしっかり、ついていっているのが好調の要因だと思います。一生に1度のチャンスです。あきらめず一生懸命やっていれば、いいことがあるという他の力士への励みにもなります。

最後に苦言もあります。貴景勝の猫だまし。攻め手がないとはいえ横綱戦でアレはいけません。7敗同士の大関戦も、まるで幕内下位のような内容でした。地位を守って頑張ってきた先輩大関たちのことを考えると寂しすぎます。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)