元大関琴奨菊の秀ノ山親方(38)が、10月1日に東京・両国国技館で引退相撲を開催する。5月30日からチケットの販売が始まった。準備状況や、指導者としての近況など、インタビューを2回に分けてお送りする。前編は、引退相撲への思いについて。【取材・構成=佐々木一郎】

-引退相撲へ向けての準備状況はいかがですか

秀ノ山親方 コロナ禍であいさつに行ける期間が決められていますので、結構バタバタしています。しっかりスケジュールを立てて、動いています。5月30日からチケット販売が始まりました。

-引退相撲のポスターは3種類も作りました。その理由は

秀ノ山親方 このコロナ禍のご時世でも、スポンサー企業さんが快く引き受けてくれました。みなさんを載せたいと思い、3種類作りました。

-そのうち2種類は、昨年3月に亡くなった兄弟子で漫画家の琴剣さんの絵を使っています

秀ノ山親方 琴剣さんの絵をどうしても使いたくて、3種類作らせていただきました。大関昇進の時など節目に描いていただき、記憶に残っていました。作るならこの絵だなと。今から戦うぞ、という雰囲気も伝わる琴剣さんの絵なので最後の断髪式に使いたいと思いました。

-琴剣さんとの思い出は

秀ノ山親方 出身が、同じ福岡なんですよね。入門当初に「この子、福岡出身だからかわいがってね」と支援者の皆さんに言ってくれていました。現役中は、勝つごとに毎回、LINEを送ってくれたんですよ。グッズで作ったクリアボードを撮影し、1勝したら1つ、2勝したら2つと、写真を送ってくれたんです。勝ち越した時は8個並べたり、毎日送っていただきました。本当にありがたかったです。毎年、春くらいにお土産用のグッズを作ってきました。その依頼も琴剣さんにしていて、かれこれ15~20種類くらい絵を描いていただいて作っていました。

-引退相撲で琴剣さんの絵を使ったグッズはありますか

秀ノ山親方 それもふまえて、考えています。少しでも琴剣さんに恩返しできるように、そういう断髪式に持っていきたいです。

-引退相撲は、レコチョクがサポートすることになりました。きっかけは

秀ノ山親方 相撲の未来について考え、何か新しい取り組みができないかと思っていたところ、佐渡ケ嶽部屋後援会の方を通じて(レコチョクの)加藤会長とお会いしました。歴史ある大相撲ですが、新たな価値を見つけて、チャレンジできたらなと思っていたところ会長と意気投合し、お願いしました。ありがたいことに、一力士だけでは考えてもできないことを、サポートしていただいています。

-引退相撲では、チケットの半券がNFT(非代替性トークン)としてプレゼントされます

秀ノ山親方 NFTのことは分からなかったけど、話を聞くと相撲界にとってもチャンスになると思いました。大相撲は瞬間のかっこよさ、様式美があります。それが多くの人に伝わったらうれしいという思いで、相撲協会からもOKをもらって進めているところです。今までの大相撲ファンとは違う方にも興味を持っていただいたらうれしいです。

-2月までの引退相撲で参考になった点はありますか

秀ノ山親方 嘉風関の断髪式が印象に残りました。来ていただく方を喜ばせるというコンセプトでやっていました。歌手の方が来たら音楽を流して、違う雰囲気を出したりとか、来ていただく方をあきさせない、盛り上がる断髪式だったので、それは自分も取り入れたい。大変な中きていただくお客さんに喜んでいただけるような、自分も思い出になるような断髪式にしたいです。

※後編は6月2日に公開します。

【佐渡ケ嶽部屋の優勝力士輩出は「近いんじゃないですか」/インタビュー後編】はこちら>>

◆秀ノ山和弘(ひでのやま・かずひろ)現役時代のしこ名は琴奨菊。本名・菊次一弘。1984年(昭59)1月30日生まれ、福岡県柳川市出身。02年初場所初土俵、04年名古屋場所で新十両、05年初場所で新入幕。11年秋場所後に大関昇進。16年初場所で初優勝。20年九州場所限りで引退した。三賞は殊勲3回、技能4回。金星は3個。得意は左四つ、寄り。