コロナ禍にかき乱された場所は土俵も乱れた。優勝争いの上位3力士、横綱照ノ富士(30=伊勢ケ浜)、大関貴景勝(25=常盤山)、西前頭2枚目逸ノ城(29=湊)が総崩れ。3敗で照ノ富士と逸ノ城が並び、1差で貴景勝が追う。千秋楽は逸ノ城が平幕の宇良との対戦が組まれ、照ノ富士は結びで貴景勝との直接対決。逸ノ城が、勝てば優勝か優勝決定戦の有利な状況で初優勝を狙う。

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始まりは逸ノ城だった。三役経験のある実力者とはいえ、番付的には下の明生に完敗で寄り切られた。引き揚げる花道は厳しい表情。しかし連鎖反応のように優勝を争う大関貴景勝、横綱照ノ富士にもバタバタと土がつき、逸ノ城はトップの座を守る形となった。

コロナ禍に揺れる今場所。7日目から続いたコロナ関連による休場はようやく止まった。何とか迎える千秋楽だが、その前日の土俵は荒れた。逸ノ城は前日13日目に不戦勝で11勝目。その際に「こんな不戦勝は初めて。今までと違うんで」と異常な事態に戸惑いを隠せなかった。精神的な影響が出たのかもしれない。

ただ、悲願の初優勝へは有利な状況といえる。宇良に勝てば優勝か優勝決定戦が確定する。宇良とは過去4勝3敗と星は接近している。しかし、今場所の逸ノ城は210キロの巨体を武器にした相撲がとれている。この日、取材に応じた師匠の湊親方(元前頭湊富士)は「(体は)大きいですけど立ち合いが低く速く立てている。低く当たればうまく攻められる」と今場所好調の要因を語った。

新入幕で13勝した「怪物」は腰のヘルニアなどで低迷期を味わった。帰ってきた「シン逸ノ城」の賜杯への思いは強い。運命の千秋楽。宇良に勝ってその権利を手にする。【実藤健一】