東十両筆頭の朝乃山(29=高砂)が、西十両2枚目の栃ノ心との大関経験者&幕内優勝経験者対決を制し、4勝1敗とした。大関経験者同士が十両以下の土俵で対戦するのは初。栃ノ心は1勝4敗となった。

朝乃山は立ち合いすぐに左上手を引き、右の差し手争いを制して一気に寄り切った。前日15日の4日目は逸ノ城に敗れたが、2場所連続の十両優勝には連敗できない状況で、35歳のベテランを退けた。「昨日に続いて今日の栃ノ心関も大きいので、下から、下からという気持ちでいきました。しっかり踏み込んで、立ち合いで負けないように意識した。目の前の一番に集中した」と胸を張った。敗れた前日の映像を「何十回」と繰り返し見て、しっかりと最後まで上手を引きつけて寄る狙い通りの取り口だった。

同じ右四つの栃ノ心には、巡業などで平幕時代によく稽古をつけてもらっていた。怪力でならした大関時代の栃ノ心に、両まわしを引きつけての力比べで、完敗することばかりだった。大関に駆け上がったころは、栃ノ心との対戦を迎えるたびに「恩返ししたい」と話すなど、朝乃山にとって栃ノ心は特別な存在だった。

気持ちが入っていた分、前回までの対戦成績は5勝2敗と、合口は良かった。先場所、けがで5日目から休場した栃ノ心が、今場所は9年ぶりに十両に落ち、2年ぶりの対戦となった。この日の取組後も「巡業中に右四つをよく教えてもらった。まだまだ自分の右四つは下手くそですけど、今があるのは栃ノ心関のおかげでもある」と、感謝の気持ちは忘れていなかった。

前日の逸ノ城戦後は「また明日から切り替えて、自分の相撲を取り切りたい」と、気落ちした様子もなく力強く話していた。事実、この日の取組後も「負けた相撲も前に出て負けたので結果は悔しいけど、次につながる相撲だった。落ち込んでいる暇はない。寝て、起きたら、また取組がくるので」と、精神的なたくましさをのぞかせていた。先場所逃した全勝優勝はなくなったが、再び連勝街道を歩み、2場所連続の十両優勝を目指していく。