日本相撲協会は31日、東京・両国国技館で大相撲名古屋場所(7月9日初日、ドルフィンズアリーナ)の番付編成会議を開き、十両昇進力士5人を発表。その中の1人で、ウクライナ出身力士として初めて関取の座を射止めた獅司(26=雷)が同日、両国国技館で師匠の雷親方(元小結垣添)同席の元、新十両昇進会見に臨んだ。

ウクライナ南部のメリトポリ出身の獅司は、6歳でレスリングを、15歳で相撲に転向し、20年3月の春場所で初土俵を踏んだ。大関まで上り詰めた同じ東欧のエストニア出身力士になぞらえ「ミニ把瑠都」とも評され、順調に出世を果たした。序ノ口、序二段を各1場所、三段目も2場所で通過。幕下では上位の壁に阻まれたが、それでも14場所で十両昇進を果たした。

日本語はまだ、うまく話せず、質問の意味が分からないと「分かりません」とハッキリ意思表示する中、会見では「うれしいです」の第一声から終始、笑みを浮かべながら報道対応した。

入門から3年あまりの新十両は、序ノ口からの出世としては早い方だが「もっと早く(上がりたかった)。(昇進まで3年は)ちょっと長かった。幕下まですぐ上がったけど、幕下上位はみんな強かった」が自己評価。2月に、師匠交代と部屋名変更で「入間川部屋」から「雷(いかづち)部屋」に変わったのを境に、この数カ月で体重が15キロも増加。「体がちょっと太って強くなった」という体重だけでなく「最初はレスリングだった。今はちょっと相撲を覚えた。突っ張りも今場所できた」と相撲の幅が広がったことも新十両昇進の要因となった。

部屋と師匠が変更された際に、獅司に対し「スターになれる可能性がある。(稽古に)頑張れるか? ついて来れるか?」と問いただした雷親方は「『頑張ります』と。それから、稽古も腕立て伏せ1つにしても一生懸命にやるし、これは大丈夫、と思った」という。その後、春場所が終わると出稽古に連れて行き、体を大きくする必要性を感じたことも効果があったのでは、と師匠は振り返った。来日して好物になったのがすしで「エビ、マグロ…。全部好き」と話し、最初に覚えた日本語が「お疲れさんでございます」。故郷の味はボルシチ、ピロシキが忘れられないようだ。

ロシアの軍事侵攻で惨状が伝えられる故郷ウクライナ。日本語がうまく話せず、言葉は最小限にとどめたが「ウクライナは大変。もっと頑張る。関取になって(なった)ママ、パパを助けます。頑張ります」と懸命に言葉をつないだ。ウクライナ関連のニュースは、あまり見ていないようだが「心配です」と心が離れることはない。寄り添うように師匠は「師匠としては(両親と会わせたいと)思うけど、とにかく来場所、大暴れするように稽古をしっかりやるだけです」と話し、相撲に集中させたい気持ちをにじませた。