大相撲秋場所(10日初日、東京・両国国技館)が迫る中でもまだまだ残暑が続く。厳しい暑さの中、親方衆の生活をのぞいてみると、涼を感じる癒やしがあった。その中身を「親方衆の癒やし」と題して全5回にわたって紹介する。3回目は二子山親方(46=元大関雅山)。

   ◇   ◇   ◇

「今日、新弟子が来るから」。何の前触れもなく、二子山親方が出掛ける前に突然言い放った言葉に、部屋の力士たちは騒然となった。一昨年6月。「この時期に誰だろう」「大学生かな」。“新弟子”の話題で持ちきりの中、数時間後、親方は車で帰ってきた。外は大雨で、部屋の中から窓ガラス越しでは、誰が誰だか分からない。「わっ、大きい」「親方と同じぐらいだ」。親方を“新弟子”と勘違いしていた。「ガチャ」。玄関で力士総出で迎えた“新弟子”は、車中で「ウリ」と名付けられた猫だった。

「新弟子が猫だと分かって弟子たちは皆、へなへなと力が抜けてましたよ」。二子山親方は、当時を大笑いしながら振り返った。もともと「部屋を持ったら猫を飼うのが夢だった」という。中学1年時に、独り暮らしだった6歳上の姉の家に迷い込んだ猫を預かって飼って以来とりこに。一緒に寝るなど、まさに猫かわいがり。「犬と違って猫はわがまま。でも、そこがまたいい」と目尻を下げた。

実家を離れ、明大、角界では各地を転戦し、飼うことができなかった。そんな中、当時小学6年の長男雅功くんをサッカーの試合へ送り届けた後、埼玉県内のペットショップでウリに出会い“猫熱”が復活。その時は侑加夫人に反対されたが、2カ月後、再び同じ店に行くとウリはまだいた。夫人に懇願して購入した。

昨年10月からは、保護猫のブルーも家族となった。当初は、引き取り手が見つかれば譲渡予定だったが見つからず「愛着がわいて」と引き取った。ともにオスで先住猫ウリが2歳、保護猫ブルーが推定3~4歳。「相撲界と似ていて最初は兄弟子のウリが偉そうにしていたけど、今はブルーと争っている」。いかに侑加夫人に気に入られるかを競う毎日。当初は反対だった夫人も2匹のとりこだ。

東京場所では「可能な限り、ずっと一緒にいたい」という。特に保護猫のブルーは警戒心が強いため、記者も対面はNG…。侑加夫人撮影の写真は家族愛にあふれていた。【高田文太】

【連載】親方衆の癒やし/連載まとめ