東前頭15枚目の熱海富士(21=伊勢ケ浜)が、優勝争いの単独トップに立った。悲願の初優勝を狙う33歳ベテラン高安(田子ノ浦)との1敗対決を押し倒しで制し、9勝目を挙げた。

出場力士のうち幕内最年少の21歳が躍動している。186センチ、181キロの推進力から前に出る相撲を貫き初日から4連勝。5日目に剣翔に敗れて初黒星を喫したものの、その後は順調に白星を積み上げた。昨年九州場所で新入幕を果たすもわずか4勝に終わった経験を糧に、9日目に金峰山を寄り切り8勝目を挙げて早々と勝ち越しを決めた。

勝てば満面の笑みを浮かべ、敗れればガッカリと落ち込んで花道を引き揚げる。人間味あふれる愛くるしさいっぱいの姿は相撲関係者の間でも話題で、伊勢ケ浜部屋付きの楯山親方(元前頭誉富士)は「令和の高見盛」と重ね合わせる。今場所の熱海富士の活躍について「かましてから押しがすごく良い。土俵際で残してからの突き押しも冴えているし、足の動きもいい。肩の力が抜けて、稽古場でできなかったことが自然とできるようになっている」とたたえた。

厳しい稽古で知られる伊勢ケ浜部屋で揉まれ、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)や横綱照ノ富士から助言をもらいながら、1日に40~50番近く相撲を取る稽古を重ねてきた。地道な努力が実を結び、10日目にしてトップに立った。残る5日。重圧を背負いながら臨む終盤戦。賜杯を抱くにはここからが本番だ。【平山連】