大相撲の関脇で、大関昇進が事実上決まっている琴ノ若(26=佐渡ケ嶽)が、初場所千秋楽から一夜明けた29日、千葉・松戸市の佐渡ケ嶽部屋で会見を行った。横綱照ノ富士との優勝決定戦に敗れ、悔し涙を流したが、一晩寝ても昇進の喜びよりも、負けた悔しさが強く残る。初優勝、祖父の琴桜と同じ横綱を目指すことを誓った。31日の番付編成会議、臨時理事会を経て正式に大関に昇進する。

悔し涙から一夜明け、琴ノ若の表情は晴れやかだった。2日後には正式に看板力士「大関」に名を連ねるだけに、会見では終始胸を張り、堂々と対応した。ただ、念願の地位を確実にしても、満足などしていなかった。「大関で終わりではない。もう1つ上を目指して、やっていかないといけない。責任感、緊張感を持ちながら臨んでいかないといけない」。父の佐渡ケ嶽親方がサプライズで用意した、祖父の琴桜の明け荷の前で、祖父に追いつき、追い越す決意を表明した。

この日の朝、祖父の仏壇に手を合わせ「ありがとうございました」と、15日間見守ってくれたことに感謝した。31日に正式に大関昇進が決まった後、墓前を訪れて報告する予定だ。祖父とは生前、大関昇進で琴桜のしこ名を受け継ぐ約束を交わした。その資格を得たが、父から継いだ現在のしこ名で大関として土俵に立ち、初優勝を目指す考えもある。いずれは琴桜に改名予定も、来場所から早速になるかどうかは「当日のお楽しみで」と、31日まで明かさない方針を示した。

31日は伝達式が行われる。注目の口上は「それも当日のお楽しみで」と、いたずらっぽく笑った。随所で明るい表情を見せたが、やはり「最後の一番は悔しかったし、その気持ちの方が強い」と、優勝決定戦で敗れた過去全敗の天敵、照ノ富士への雪辱の思いが強い。「惜しいな、悔しかったなでは意味ない。つかみ取らないといけない」と、初優勝への思いも強まった。「大関に上がったら、横綱の難しさも感じると思う。でも目指して、望んでやっていかないといけない」。大関昇進の余韻に浸る間もなく、番付の頂点を見据えていた。【高田文太】