大関経験者で西十両13枚目の朝乃山(31=高砂)が、関取としては、当時前頭の昨年7月16日、名古屋場所3日目の美ノ海戦以来、425日ぶりの白星を挙げた。新十両の旭海雄をすくい投げ。相手の右からの張り差しで、下に潜り込まれたが、右をねじ込んで転がした。初顔合わせだった幕下の先場所に続いて破った。両国国技館での関取としての白星に限れば、同じく当時前頭の昨年1月27日、初場所14日目の熱海富士戦以来、596日ぶりの白星となった。
「けが明けからの十両だったので素直にうれしい。内容は悪いけど、白星につなげられてよかった」。取組直後には首をひねっていただけに、完勝とはいえない内容こそ満足できなかったが、白星を飾ったことを前向きにとらえた。何よりも、土俵入りと取組の前後で一際大きな、十両では最大級の声援と拍手が送られ「土俵入りとかもあった分、先場所よりも大きく感じた。すごく力になった」と感謝した。
自身の白星を皮切りに、ともに新十両の朝翠龍、朝白龍も白星発進した。79年秋場所の佐渡ケ嶽部屋以来の「トリプル十両昇進」で、46年ぶりに同部屋から同時に十両昇進を果たした3人が、そろって白星。朝乃山は「自分が1番、番付が低いので最初に勝ててよかった。(土俵)下から2人に見られている感じがして緊張した(笑い)。いい流れをつくることができてよかった」と、弟弟子2人の勢いもつけることができ、ホッとしたような表情で話した。
母や親族の思いが詰まった本場所用のまわし、締め込みで、再十両の土俵に立った。今場所から新調した「至極(しごく)色」の締め込み。今場所前、朝乃山は「黒に見えるかもしれないですけど、黒寄りの紫色です。『至極色』。母から『十両に上がったら着けてほしい色がある』と、5月だったか、7月だったかの場所前に言われていて」と、この締め込みを着けることになった経緯を説明していた。
至極色に込められた意味について朝乃山は「相撲道を極めてほしいという意味が一つ」と話した。続けて「それと、もう一つ、まさに自分のことを指しているような意味があって」と話すと、自身のスマートフォンに届いた、母の石橋佳美さん(63)からのメールを見せてくれた。そこには至極色の説明と、母からの激励が入り交じった文章が書かれていた。
「捲土重来(けんどちょうらい) 大志、大望を抱いた者が一度や二度の挫折や失敗で諦めたり挫(くじ)けたりするな まきかえせ」。
朝乃山は「うれしかったですね。締め込みを作るのに、だいたい60~80万円かかる費用は、母を中心に身内の方に出していただきました。年齢的にも、これがラストチャンス。この締め込みを最後まで、引退するまで着けていたいと思っています」と、表情を引き締めて話していた。そんな思いのこもった締め込みを着け、まずは1場所でも早い幕内復帰が目標。それだけに「今場所は最低でも2桁勝たないと。必ず優勝争いに加わって、できれば優勝したい」と語っていた。関取復帰を白星で飾り、さらに勢いを加速させるつもりだ。

