「にしたんクリニック」「イモトのWiFi」で知られるエクスコムグローバルの西村誠司社長(56)が、日刊スポーツの大相撲担当・佐々木一郎記者と対談しました。「すもうにもうす」と題し、3回連載します。第2回は、現在の角界への思いを明かしました。
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佐々木 今、大相撲の人気はすごくて、チケットがなかなか取れません。秋場所終了時点で、340日間連続満員御礼が続いています。史上最多は666日連続で、若貴時代に記録しました。現在は、史上2番目の記録なんですよ。
西村 ずっと続くんじゃないですか。
佐々木 続きますかね。冬の時代を知る親方衆は心配はしているんですよ。いつか途切れるかもしれないし、この好景気がずっと続いたらいいんですけど、そうとも限らないってことを経験上知っています。
西村 僕はずっと続くんじゃないかなと思っています。やっぱりその秘訣(ひけつ)は…。僕って、ビジネスでも基本をきっちりきっちりやってくっていうことを大事にしています。やっぱり力士が真面目に、きっちり稽古して、いい相撲を取る。そこができているからじゃないかなって思います。ファンも目が肥えているから伝わるじゃないですか。藤島部屋の若い人たちにも言っているんですよ。番付関係なく、序ノ口だろうが序二段だろうが、自分の相撲に対する真面目さって、どの番付だろうが伝えられるものだし、その思いは番付が下でも、関取たちを超えることができる。だから僕は、約600人の力士が全体でそういう方向に向かっているのがファンに届いて、人気になっている。それができているから、僕は長く続くんじゃないかなと思います。
佐々木 いわゆる相撲界でかねて言われている「土俵の充実」というところなんですよね。確かに社長がおっしゃっている通り、序ノ口、序二段でも一生懸命稽古して、レベルはともかく本場所で一生懸命取っていることは伝わりますからね。
西村 僕、それが大事だと思うんですよ。そこって番付関係ないんです。うちの社員も新入社員を4月1日に迎えて話す時は、「今は経験もなくてやれることも少ないけど、でも一生懸命仕事を誰かのためにやるって気持ちでは先輩を超えられるから」と伝えます。それ力士も一緒じゃないですか。新しい子たちが入ってきて、稽古場で一生懸命やるのって、絶対に先輩力士に伝わるものだと思うんで、それがその部屋のいい雰囲気作りになる。それがどの部屋にも伝わって、全体でという形だと思うんですよね。
佐々木 そうですね。確かに藤島部屋は特に稽古はしっかり厳しくやっていると聞きますね。その藤島部屋は、西村社長が以前おっしゃっていたんですけど、ホームページはないし、あえてSNS発信もしません。
西村 ミステリアスでいいです。僕って派手な広告宣伝をやる感じじゃないですか。でも、僕は相撲に関しては、親方にSNSやろうとかホームページ作ろうとか言わないんですよ。僕はあの感じがいい。保守本流のミステリアスな感じで。なので、ファンとの接し方も、巡業での実際の触れ合いとか、国技館の出待ちだとかの時の触れ合いはファンサービスを完璧にやるぐらいのあんばいが一番いいかなと思っています。例えばTikTokやYouTubeは賛成です。ただ、そこでちょっとおちゃらけるとか、そういう雰囲気はあんまり出さない方がいいかな。二子山部屋、伊勢ケ浜部屋ような発信は、あっていいと思いますよ。ただ、見せ物じゃない。
佐々木 やっぱり、一定の神秘性が欲しい。
西村 いや、そうですよ。元々、神事ですから。
佐々木 西村社長は力士の待遇改善にも関心をお持ちですが、来年から優勝賞金も三賞賞金もアップします。
西村 額がどうかはさておいて、33年ぶりに変わるっていうのはすごくいいことですね。僕はかねて、自分が引っ張る形で、他の企業、スポンサーがもっともっと、幕内最初の方の取組にももっと懸賞がついてほしい。幕内力士たちには、もらったお金を付け人や部屋の若い衆にお小遣いを渡したり、ご飯に連れていったりして、染み出るようにして欲しいといつも言っているんです。
佐々木 これは藤凌駕や藤青雲にもそういったお話はされているんですか
西村 もちろんです。言います。
佐々木 彼らは優しいから、ちゃんとやってくれるんじゃないですか。
西村 やってくれると思います。今やっていると思いますよ。
佐々木 あとは、西村社長が前回の対談で提案された巡業の件です。来年の夏巡業から日程や移動が緩和され、力士の負担が軽減される方向です。巡業用のバスを贈呈したいとのお話もありましたが、これは継続案件と思っていいですか。
西村 僕は、藤島親方が理事長になったらやりたいと思っています。どこかそういう応援してくれる企業さんにも声をかけて、1台ずつとかね。革張りの力士サイズのふかふかのシートがフルフラットになる。1台に座席が15、16席しかないサロンバス乗ったら、最高じゃないですか。乗りたいなって思えるようなサロンバスが4台ぐらいあって、提供したスポンサーのラッピングバスになっておけばいいじゃないですか。
佐々木 力士数が減っていることについては、どう思われますか。大相撲の人気はものすごいのですが、力士数はじわじわ減少しています。プロスポーツの多様化や、少子化の影響ももちろんあります。そんな中、なかなか妙案は見つかりません。
西村 アマチュア相撲を盛り上げることがいいことだと思っています。今度、白鵬さんとご飯に行くんですが、今の思いとかを聞きながら、アマチュア相撲のスポンサーができたらいいなってちょっと思っています。
佐々木 確かにプロとアマの連携は伝統的にあまり上手じゃないんです。
西村 アマチュア相撲、小中高を僕らも資金提供して盛り上げられたらいいなって思いがあります。
佐々木 底辺拡大ができれば、いずれ力士になる可能性がありますからね。それは確かにまっとうなやり方です。
西村 力士の皆さんの給料が、僕の理想は幕内力士全員が1億円プレーヤーみたいになると、子供たちも将来の職業として憧れる。そこは懸賞をもっともっと増やしていくことによってできるかなと。
佐々木 白鵬さんはアマチュア相撲を五輪競技にしたいという気持ちは強いんでしょうけれども、大相撲のことは常に考えていますからね。力士を送り出したい気持ちは感じます。
西村 そうなんですよ。力士を増やせるように、僕も力を貸していきたいですね。
(つづく)
◆西村誠司(にしむら・せいじ)1970年(昭45)5月20日、愛知県生まれ。生活保護を受ける家庭に育ち、中学から新聞配達。名古屋市立大経済学部卒業後、93年アクセンチュア入社。95年に起業。モバイル通信サービス「イモトのWiFi」、メディカル支援サービス「にしたんクリニック」「にしたんARTクリニック」など、さまざまな事業を展開している。現在の年商は333億円にまで成長。TikTokフォロワー数8・3万。

