卒業公演にも、小嶋の優しさと愛が詰まっていた。1曲目からAKBメンバー全88人と歌った。同期生でユニットのノースリーブスを8年共にしてきた高橋みなみと峯岸みなみとも歌った。2月の卒業コンサートでは、前田敦子ら元祖神セブンで披露したデビュー当時の思い出の曲「スカート、ひらり」は、「次世代を担うかわいい新神セブンと一緒に」と、エース向井地美音や13歳の久保怜音らとミニスカートを翻した。

 3月31日に卒業特集が組まれた音楽番組「ミュージックステーション」でも、118人もの後輩たちを出演させて、全メンバーの名前をクレジットでも画面に流してあげ、タモリに促された最後のあいさつでも、自分のことではなく「今後のAKB48もよろしくお願いします」と、グループを売り込んだ。ずっと冗談と脱力スタイルで照れを隠してきていたが、秘めていたグループ愛は、重さも意味も深かった。

 この夜のアンコールでは、デビュー曲「桜の花びらたち」を歌い終えると、「これから困難があって不安になっても、12年前の私たち1期生も同じ気持ちでここでこの曲を歌っていました。だから、この劇場があるみんなも、きっと何でも乗り越えられる」と、泣きじゃくる後輩たちを励ました。お決まりの「卒業後の私もよろしく」などとは、最後までひと言も口にしなかった。

 気の遠くなるほどの4151日を、軽やかに、粋に、生き抜いた。誰にもマネのできないアイドル人生だった。【瀬津真也】