女性アイドル界にとって、この1週間あまりは歴史に残る大きなコンサートが2つ、行われた濃密な日々だった。1つは、10月31日にさいたまスーパーアリーナで行われた、AKB48渡辺麻友の卒業コンサート。もう1つは、今月7、8日に開催された乃木坂46初の東京ドームコンサートだ。幸運にも、どちらも取材することができたが、ここでは渡辺のコンサートを振り返りたい。

 渡辺のコンサートは、キュートさが随所に盛り込まれた、「らしい」ステージだった。それもそのはず、ほぼ渡辺のプロデュース公演だったからだ。選曲は、劇場公演の名曲「初日」、総選挙1位でセンターを務めた「心のプラカード」、ソロデビュー曲「シンクロときめき」など、自分にゆかりのあるもので固めた。出演メンバーは、約11年を過ごしたAKB48を中心に、自分が期待する若手を加えた面々。城をイメージしたクラシックな世界観も、それに合わせた衣装も、すべて渡辺のリクエストをスタッフが最大限に実現したという。渡辺に対する、スタッフの愛が感じられた。

 渡辺は6月の卒業発表直後から、卒業コンサートの打ち合わせを始めていた。熱を帯びた議論は、時に夜中の2、3時にまで及ぶこともあった。そのかいあってか、8月ごろに話を聞いたときには「セットリストはほぼ決まってるんですよ」と明かしてくれた。決していいかげんな準備をしないところも、渡辺らしかった。

 一方で、いい意味で「らしくなかった」のは、公演に向けたレッスンだった。同期の3期生、柏木由紀が明かす。「麻友があんなに後輩に指導している姿を見たことがなかったです。珍しいなって思いました。もちろん今までも、私が見ていないところで、いろいろ教えてあげていたとは思いますけどね」。引っ込み思案なところがあり、後輩に自分から話しかけに行くことがあまりできなかった渡辺も、最後の最後に「伝えたいことがある」と感じたのだろう。柏木は「麻友から直で教わったことって、絶対に忘れないと思うんですよ」と、後輩への好影響を確信していた。

 渡辺は卒業前、チーム8の小栗有以と、同じチームBの研究生で、自らドラフト会議で選んだ西川怜、山辺歩夢の3人に、特に厚い期待を寄せていた。渡辺の置きみやげをもらった3人が今後、どんなアイドル人生を歩むのか、注目したい。