AKB48の53枚目シングル(9月19日発売)選抜メンバーを決める第10回世界選抜総選挙が16日、名古屋市のナゴヤドームで行われ、SKE48松井珠理奈(21)が初のトップ当選を果たした。19万4453票を獲得し、速報1位のNGT48荻野由佳(19)を逆転。48グループの頂点に立った松井は、快進撃を続ける乃木坂46、欅坂46への反撃を宣言した。須田亜香里(26)が自己最高の2位に入り、SKE48が地元でワンツーフィニッシュを達成した。

 両手に祈りを込めた須田の隣で、松井は自信に満ちた表情で発表を待った。「自分の」勝利ではなく「SKE48の」勝利を確信したからだった。勝ち名乗りを受けると、取り囲んだSKE48メンバーに深々と一礼。そして、堂々たる歩みでステージの中央に立った。

 深紅のマントに袖を通す。SKEカラーのオレンジでなくとも、よく似合った。女王のいすに座ると、子供のように大はしゃぎした。「今日は泣きません。感謝しかないから」。話しているうちに、アイドル10年の苦難がこみ上げた。涙が出そうになると、再び「泣きません!」。会場を笑わせた。

 発表の数分前までとは、別人のようだった。発表を待つ間、何度も席を立ち、降壇した。午前のコンサートでは、過呼吸でダウン。地元開催、グループ結成10年目…。期待の大きさが、重圧となって表れた。隣の松本慈子に手を握られ、やっと心を落ち着かせた。

 横山由依、岡田奈々らが、坂道シリーズに勢いを取られている現状をスピーチで嘆き、悲壮な決意を明かしていた。聞いているうちに、松井は悲しくなった。「みんなのスピーチを見たら、寂しそうだった。私はメンバーが寂しい姿を見たくない」。だから、決意した。「私は総選挙1位がゴールだと思ってやってきました。今、1位になりました。だから…」。卒業なのか? 言いかけて、一瞬笑った。「卒業しません! 気づきました。まだ必要と思ってもらえてるんだって」。現役続行宣言に、客席から安堵(あんど)の息が漏れた。

 昨年11月、乃木坂46の東京ドーム公演を見学した。満員の客席で振られる、紫色のペンライト。そして大歓声…すべてが悔しかった。1曲目で席を立った。「いったん総選挙の戦いは終わりですけど、まだ戦わなきゃいけないところ、ありますよね。私は本気で48グループを1位にしないと、気が済まない。頼もしい後輩、温かいファンもいる。お互いが信じ合えば、48はまたアイドル界のトップになれます。なりたいんじゃだめなんです。なるんですよ!」。打倒坂道へ、のろしを上げること。頂点に立ったから、できることがある。【森本隆】