東野圭吾氏の数あるミステリーの中でも、「ある閉ざされた雪の山荘で」はトリッキーな作品だといわれる。自身「特に突拍子もない設定の物語だと自負しています」と語る。12日公開の同名映画は、そんな異色小説の映像化に挑んでいる。
瀟洒(しょうしゃ)な貸別荘に「招待状」を受け取った7人の役者が集まる。6人は人気劇団「水滸」のメンバー、ただ1人外部から参加したのがバイトをしながら水滸の新作舞台のオーディションを受けた久我(重岡大毅)で、主演の彼が映画の進行役として狂言回しのような役割も担っている。
まずは登場人物全員が「役者」であることから、それぞれの言動が事実なのか演技なのかという「?」が生まれる。貸別荘がそのまま新作「ある閉ざされた雪の別荘で」の舞台になぞらえられた最終オーディションであり、主宰者から構内放送のように指示が告げられる。4日間ここから出ることが許されない7人のメンバーの行動1つ1つが審査対象となり、ピリピリとした密室空間が出来上がっている。
そして、事件は起こり、1人また1人とメンバーが姿を消していく。これは主宰者のシナリオの内なのか、それとも本当の殺人なのか。まるで謎解きのために用意されたような舞台設定にはヒントがちりばめられているようで、それが多すぎるゆえにかえって行く末が見えにくい。
舞台演出家としての顔も持つ飯塚健監督は、劇団員同士のやりとりに、さもありなんという雰囲気を醸しながら、虚構と現実をいい感じに行き来して真相の片りんをチラ見せしていく。
トップ俳優の間宮祥太朗、主演候補の中条あやみ、クセ強の岡山天音、お嬢さま育ちの西野七瀬、勝ち気な堀田真由、心優しい戸塚純貴、そしてカギを握る8人目として森川葵と、それぞれが役柄の色合いをわかりやすく演じ分けている。重層構造の表裏を巧みに行き来しながら、「全員役者、全員容疑者」という宣伝文句にふさわしい好演だ。重岡を含め男優陣の安定感、堀田や森川には見せ場が多い。そして自然流に見える中条と西野が時折のぞかせるあれっと思わせる表情は、作品への深い理解を感じさせる。
原作を読んでいないので、こちらの推理はぶれぶれだったが、終映後に振り返れば、8人それぞれの勘所を押さえた演技を思いだし、改めて感服した。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)




