ドラマ「デスパレートな妻たち」で主要キャラクターのスカーボ役を演じた女優フェリシティ・ハフマンと「フルハウス」でレベッカ役を演じていたロリ・ロックリンら50人が、名門大学に子供を不正入学させた罪で逮捕されるという米国史上過去最大の裏口入学スキャンダルが発覚。富と名声があるセレブや大手企業のトップらがウィリアム・シンガーという進学カウンセリング会社を経営するブローカーに大金を支払ってエール大学やスタンフォード大学、南カリフォルニア大学(USC)などのエリート校に自分の子供を不正に入学させたというもので、シンガー被告は入学試験の点数の改ざんや替え玉受験、偽りのスポーツ推薦などの手口でこれまで800人以上の子供たちを裏口入学させてきたと伝えられています。裏口入学は2011年からつい最近まで行われており、親から受け取った金額は2500万ドルに上り、大学のスポーツチームのコーチに賄賂を支払ってスポーツ経験のない子供をスポーツ推薦で入学させたり、入学試験官を抱き込んで提出した答案を修正したり、替え玉受験をさせるなどもしていたといいます。そして親たちにはその見返りとし偽の慈善団体に寄付金と偽って高額な謝礼を振り込んでいたのです。

報道によると、ロックリンと夫でファッションデザイナーのモッシモ・ジャンヌリ被告は、ボート経験のまったくない2人の娘たちをボート競技の選手と偽って推薦枠でUSCに入学させるために50万ドルを支払っていたとのこと。推薦入学するにあたって、選手であることを証明するために偽りのトレーニング風景を撮影して証拠として提出までしていたといいます。長女イザベラ(20)と次女オリビア(19)は、共に両親が逮捕された直後に大学を自主退学。特にSNSに多くのフォロワーを持つインフルエンサーとして知られるオリビアは、入学当時に「大学ではパーティーが楽しみ。学業はどうでもいいの」などと語る動画を投稿していたことも多くの人の怒りを買ったようで、契約するアマゾンやセフォラ、マーク・ジェイコブズなど多くのブランドから提携を打ち切られたといわれています。一方のハフマンも1万5000ドルを支払い、長女を希望する大学に入学させるために試験で不正行為を行ってもらったといわれています。

エミー賞を受賞し、オスカーにもノミネートされたことのあるハフマンは、ネットフリックスで配信される映画「Otherhood」の公開を来月に控えるなど公開予定作品がいくつかありますが、今後これらの作品が事件の影響を受けることは免れないでしょう。ロックリンも配信中のネットフリックスのドラマ「フルハウス」のスピンオフシリーズ「フラーハウス」を解雇されたと伝えられており、今後は2人とも女優として華やかな世界に復帰するのは難しいといわれています。有名私立大学の学費は年間4~6万ドルと決して安くはなく、その上に裏口入学のために多額の賄賂を支払っていたことは多くの人を驚かせましたが、一握りの富裕層の子供は親の力でエリート大学入学に有利なのだということが改めて証明された形となりました。実際に多くの大学では多額の寄付を行えば入学が有利になるというのは以前から公然の秘密で、学校の図書館や講堂に寄付した人の名前がついていることも珍しくありません。今回逮捕されたのは賄賂を受け取ったスポーツ部のコーチや試験官と保護者だけで、実際に不正入学した子供たちは逮捕されていませんが、一部の子供は裏口入学を周知していたともいわれています。大学自体の関与は認められず、子供たちの処遇は各大学に一任されているといいますが、この事件を受けて早くも「自分が志望校に入学できなかったのは不正入学があったせい」「不正入学した子供のせいで自分の子供が進学する機会を奪われた」などとして学生や保護者らが大学に巨額の賠償金を求める集団訴訟を起こしています。また、今回のスキャンダルを受けて、トランプ米大統領にもコネ入学疑惑が浮上。多額の寄付金を支払って長男トランプ・ジュニア氏と長女イバンカさんを自らと同じペンシルベニア大学ウォートン校に入学させたのではないかとワシントン・ポスト紙などが報じています。大学に寄付をすること自体に違法性はなく、「大学入学はお金で買えるもの」なのかという議論が改めて論じられることになりそうです。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)