第95回アカデミー賞のノミネーションが今月24日に発表され、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」が最多10部門11ノミネートを果たし、前評判通り「イニシェリン島の精霊」と「西部戦線異状なし」がそれに続いて9部門で候補入りしました。一方で今年も、予想外のノミネートや逆に期待されたあの俳優が候補から漏れるなど多くのサプライズもありました。

毎年予想外のノミネートが話題になるオスカーですが、今年のノミネーションで起きたサプライズを紹介します。

■トム・クルーズ

22年5月24日、「トップガン マーヴェリック」ジャパンプレミアで来日した主演のトム・クルーズ
22年5月24日、「トップガン マーヴェリック」ジャパンプレミアで来日した主演のトム・クルーズ

娯楽大作ながら作品賞へのノミネートを果たした「トップガン マーヴェリック」に主演したトム・クルーズは、候補入りが期待されながら選考から漏れた1人。同作は興行的な大成功のみならず、評論的な評価も高く、コロナ禍で苦しむ映画産業全体を救う異例の大ヒットになったことも高く評価されています。一方で初オスカー受賞の可能性まで取り沙汰されたクルーズは、主演男優賞へのノミネートを逃す結果となりました。

■アンドレア・ライズボロー

今年最大のサプライズノミネートと言われているのが、インディーズ映画「To Leslie」で主演女優賞にノミネートされたアンドレア・ライズボローです。これまでの主要な前哨戦に1度もノミネートされていないライズボローが突然アカデミー賞候補になったのは、著名なハリウッドの俳優仲間を巻き込んでのSNSを活用した宣伝キャンペーン戦術が功を奏したからだと言われています。しかし、この売り込みにルール違反疑惑が生じ、同賞を主催する映画芸術科学アカデミーが検証すると発表する騒動に発展しています。

■アナ・デ・アルマス

永遠のセックスシンボル、マリリン・モンローの生涯を描いた「ブロンド」で、モンロー役を務めたアナ・デ・アルマスの主演女優賞ノミネートもサプライズとして受け止められています。ネットフリックス作品の「ブロンド」は、公開当初からモンローの描き方などが批判され、特に性的暴行や堕胎シーンなどが酷評され、毎年恒例の最低映画や俳優を決めるゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)で最低作品賞を含む最多8部門にノミネートされています。そんな中で、誰が演じても批判されるであろう難役モンローを見事に演じ切ったアルマスただ1人がラジー賞ではなく、オスカー候補になったのは、ある意味サプライズと言えるでしょう。

■サラ・ポーリー監督

「ウーマン・トーキング 私たちの選択」でメガホンを取ったサラ・ポーリー監督が、監督賞のノミネートを逃したことで、同部門に女性が1人もノミネートされなかったことは失望として受け止められています。同賞は「ノマドランド」(20年)のクロエ・ジャオ監督と「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(21年)のジェーン・カンピオン監督の女性2人が過去2年連続で受賞する快挙を成し遂げていただけに、3年連続となるポーリ監督のノミネートが期待されていました。作品賞になんとか滑り込みで候補入りしたことが唯一、救いとなっています。

■ステファニー・スー

助演女優賞部門に「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」からジェイミー・リー・カーティスと共にステファニー・スーが選ばれ、Wノミネートとなったこともサプライズとして受け止められています。マーベル映画「シャン・チー/テン・リングスの伝説」(21年)で脚光を浴びたスーは、本作では主人公の娘ジョイと悪の分身ジョブという2つの異なるキャラクターを演じる難しい演技に挑戦しており、本ノミネートでさらなる飛躍が期待されています。

他にも、「ウーマン・キング」に主演したヴィオラ・デイヴィスが選考から漏れたことや、「ラ・ラ・ランド」でアカデミー賞を史上最年少で受賞したデミアン・チャゼル監督の「バビロン」でスターになることを夢見る主人公を熱演したマーゴット・ロビーが候補入りしなかったことなども残念な結果して受け止められています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)