来年、13代目市川團十郎白猿を襲名する市川海老蔵(42)が、「成田屋」として初代から信仰している成田山新勝寺(千葉・成田市)で修行を行った。新之助から海老蔵を襲名する時には、奈良南部にある修験道の聖地「大峰山」にこもり、修行を体験している。父12代目團十郎も襲名前に成田山新勝寺にこもって修行をしており、その例にならっての修行となった。

「逃げずに生まれ落ちた家の定めと運命と歴史を背負い込んでも、走り続けられるように」と覚悟を決めて12月3日から修行に入った。「父が成田山に来て修行している姿や、何かに打ち込んでいる時の姿は記憶にあり、その行動の根本は何か? 正直分からなかった。でも今は分かる。つらい修行だったけれど、『そういうことか』『團十郎を襲名することをどうとらえていたか』など、成田山新勝寺のわずかな時間ですが、私にも確実に見えたものがあった」という。

そんな海老蔵が座長として取り組むのが来年1月の新橋演舞場「初春歌舞伎公演」。昼の部でAKB48グループや坂道グループの生みの親で作曲家の秋元康氏(61)が作・演出を手がけ、歌舞伎に初挑戦する新作「NINJA KABUKI 雪蛍恋乃滝」を上演する。海老蔵は「まだ台本は完成していないんですが、忍者の『ロミオとジュリエット』で、禁断の恋を描くと聞いています」。チラシには長男堀越勸玄くん(6)の名前が未掲載だが、会見で報道陣が「出たいですか?」と勸玄くんに聞くと、「ハーイ!」と即答。海老蔵も「本人は忍者が大好き。出る方向です」と話したが、その後、海老蔵演じる忍者稲妻が幻術を使う時に登場する「幻術の稲妻」役で出演することが決まった。

夜の部では、海老蔵がめ組辰五郎で主演する「め組の喧嘩」に勸玄くんが出演するほか、麗禾ちゃんこと市川ぼたん(8)と舞踊「雪月花三景」で共演する。妻小林麻央さんが亡くなって2年が過ぎたが、海老蔵は残された子供について「麗禾もぼたんを襲名して、希望の光を見つけて、日常から芸事への意識が出てきた。弟への心配りもできるようになってきた」と目を細めた。

勸玄くんは出演する公演は、チケットがすぐ売り切れとなる人気ぶり。海老蔵は「私にはない鈍感力を持っている。頼もしいなと思うし、こんな姿に父や麻央も喜ぶだろうなと思う」としみじみ。さらに「せがれは持って生まれた愛嬌(あいきょう)があって、父(12代目)に似て、おおらかな雰囲気が出てきた。父や麻央にも似ているので、(勸玄を見ていると)父や麻央と会っているようで、何とも言えない感情になる」と、複雑な思いも明かした。

1月の演舞場公演のチケットはほぼ売り切れのため、24日千秋楽の予定が、翌25日の昼・夜で追加公演を行うことが急きょ決まった。異例のことで、これも勸玄人気ゆえのようです。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)