上演中のパルコ劇場「海をゆく者」を見て、感慨深くなった。出演は小日向文世(69)高橋克実(62)浅野和之(69)大谷亮介(69)平田満(70)の5人。2009年の初演、14年の再演で吉田鋼太郎(64)が演じた役を初参加の高橋が演じた以外、4人は初演から同じ役で続投。14年前は50代半ばだったが、今は高橋以外は前期高齢者、でも、見た舞台は今回が一番良かった。いや、前2回も良かったけれど、押しも押されぬ名バイプレーヤーの5人の円熟味が増し、見終わった後の余韻がより深くなった。何より、私と同世代で、若いころから見ている彼らの緊張感あるせりふの応酬、投げ飛ばされたりと文字通しの体当たり演技にうれしくなった。

5人は実力派俳優として舞台以外でもドラマ、映画で活躍するけれど、若い時期は苦労を重ねた。小日向は串田和美が主宰したオンシアター自由劇場に所属して主役級で舞台に立ったけれど、解散するまでの映像出演は1度だけ。2000年に三谷幸喜の舞台「オケピ!」に出演したのをきっかけに仕事が舞い込むようになったという。46歳の時だった。大谷もオンシアター自由劇場出身で、退団後に新しい劇団を旗揚げしたものの、10年ほどで解散、50歳くらいまで時々アルバイトをしていたという。高橋も20代半ばで劇団「離風霊船」に入り、小劇場で活躍した。1998年のドラマ「ショムニ」出演が転機となったが、その時は37歳だった。

初日前の会見では、浅野が「体力、記憶力は少しずつ衰えている」と認めつつも「芝居の方の円熟味は増して、9年前よりもっと良い作品に仕上がっていると思う」と言えば、平田も「3回目だけれど、新たに魅力が増した『海をゆく者』になっている」。その言葉通りの舞台だった。小日向は「この年代が5人もそろっている舞台は、たぶん今までないと思う。本当に貴重だと思うので、ぜひ見てもらいたい」。師走で何かと忙しい日々だろうけれど、演劇ファンには必見の舞台です。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)

舞台「海をゆく者」。左から高橋克実、浅野和之、大谷亮介、平田満、小日向文世(2023年12月6日撮影)
舞台「海をゆく者」。左から高橋克実、浅野和之、大谷亮介、平田満、小日向文世(2023年12月6日撮影)