人間の心理状態が数値化され、罪を犯す前の「潜在犯」が追い立てられる。そんな近未来社会を舞台に「刑事課一係」の活躍を描くシリーズは、11年前のテレビ放送から始まっている。そのデストピア・アニメの集大成的作品だ。

年初のある日、外国船舶で殺人事件が起き、一係が駆けつける。現場には外務省行動課もいて捜査権を主張。組織間の確執をはらみながら、犯罪の裏にテロ組織ピースブレイカーの暗躍が浮かび上がって…。

警察モノのテイストが漂い、その王道を行くような展開で期待を裏切らない。見せかけの平和が生み出す歪みが随所に漂っている。

一係の若きリーダー常守朱(声・花澤香菜)の順法精神はぶれない。時に見せる危うさが何とも魅力的で、年かさの係員たちが支えたくなるのも分かる気がする。その関係性は時にほっこりとさせ、善悪の境目が見えにくい時世の、ある種理想のリーダー像を示唆しているようにさえみえる。

塩谷直義監督と手だれのスタッフによって、それぞれのキャラはしっかりと立ち、多彩なアクションシーンの背景にはアニメならではのスケール感が目いっぱい生かされている。【相原斎】(このコラムの更新は毎週日曜日です)