「なんだか生きづらいな」と感じたことのある人は、きっと少なくない。人と同じように振る舞えなかったり、周囲の「普通」になじめなかったりする。本作は言葉になりにくい違和感を兄妹の日常の中から見つめる。
舞台は大阪・堺。SUPER EIGHTの安田章大が自閉スペクトラム症(ASD)の特性を持つ兄・大貴を演じ、結婚を控える妹・希をのんが演じる。ほとんど言葉を発しない大貴を、安田は表情や視線、体のこわばりで表現する。
大貴は毎朝、清掃の仕事へ向かう道を直進と直角で進み、弁当のおにぎりも四角い。周囲には不思議に映る所作も彼にとっては心を落ち着かせるための形であり、生きるための「普通」だ。その姿を見ていると、こちらが当たり前だと思ってきた物差しこそ問われているのだと気づかされる。
希も、兄を思う気持ちと自分の人生の間で揺れる。のんは喜びや悲しみ、憤りを瞬発的に表現してみせる。関西弁の軽やかな応酬が、重くなりがちな物語にふっと息を通す。兄妹の互いを思う姿から人を理解する難しさと大切さが浮かび上がる。見終えた後、誰かの「普通」を狭めていなかったかと、静かに問い返された。【松浦隆司】
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