将棋の史上最年少4冠、藤井聡太竜王(王位・叡王・棋聖=19)が渡辺明王将(名人・棋王=37)に挑戦する、第71期ALSOK杯王将戦7番勝負第2局が23日、大阪府高槻市の温泉旅館「山水館」で再開、指し継がれています。

将棋界にある8つのタイトルのうち、7つを占める「4冠×3冠」の頂上決戦。タイトル戦での「藤井将棋」は若手プロ棋士にとって「最高の題材」になっているようです。日本将棋連盟常務理事の鈴木大介九段(47)に聞きました。

「藤井さんの将棋だけを研究している若手が増えてきています」。タイトル戦ではネット中継などを見ながら「藤井さんの次の一手を予想し、当てていく。最初のころよりも、みんな、当たってくるようになっていると思う。藤井さんの指し手が読み解けてきているようになってきた」。

将棋界では人工知能(AI)による研究が全盛時代を迎え、棋士たちの研究方法に変化をもたらしました。かつては他の棋士との練習対局が主流でしたが、近年はAIを用いた研究に多くの時間を割く棋士が増えています。

「勉強法ががらりと変わりました。昔のスポ根ではないですけど、うさぎ跳びをやっている時代から将棋ソフトを使う時代になり、そこに藤井さんが登場した。タイトル戦で藤井さんはトップ棋士を相手にすばらしい手を指される」

「藤井将棋」には毎回のように妙手が出てきます。トップ棋士の中でも読みの速さ、深さ、正確さは突出し、先入観にとらわれない柔軟な発想はプロをも、うならせます。

若手棋士だけではなく、プロ棋士が、対局をリアルタイムで共有し、将棋ファン以上に「次の一手は何か」に注目しています。

「藤井さんがうまくAIを使いこなして研究している将棋を、いまではリアルタイムで、しかも解説付きでみることができる」

AIが出現する前は「羽生さんが何をやっているか、だれも分からない状態だった」といいます。AI研究の全盛期となったいまは「藤井さんが指す将棋が棋譜として示される。それをみて勉強ができる」。

そう解説する鈴木九段は「藤井将棋」を「最高の題材です」。“藤井効果”によって「ここ数年、全体のレベルが確実に上がっている」と話します。王将戦7番勝負第2局も序盤戦から一手も気が抜けない将棋になりました。このタイトル戦でも「藤井将棋」の研究が進んでいます。

【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)