星組の若手スター礼真琴が、ロシア作家チェーホフの代表的戯曲を舞台化した兵庫・バウホール公演「かもめ」(22日~6月1日)に主演する。ダンス、歌を武器とし、まだ新人公演出演資格がある6年目ながら、バウ初主演となる。芝居がメーンの今作を機に3拍子そろったスターへの飛躍を目指している。

 大劇場公演の前作「眠らない男-ナポレオン・愛と栄光の涯に-」、前々作「ロミオとジュリエット」の新人公演に連続主演し、今回、バウ初主演が決まった。旬を迎えた若手スターは「旬」に敏感で、趣味の映画観賞にも反映する。

 「休みのたびに映画館で映画を見ています。1日2本見ることも。『アナと雪の女王』は、吹き替えも字幕も見ました。早乙女太一さんが好きで『クローズEXPLODE』も見たし、『名探偵コナン 異次元の狙撃手』も見ましたね」

 「アナと-」は姉妹を主人公に、歌や踊りなどで心情をつづるストーリー。

 「(ミュージカルは)宝塚にも合いますし、やりたいです。歌もすてきな歌ばかり。もしやるならエルサ、雪の女王をやりたい」

 男役として参考にする俳優はジョニー・デップ。日本では早乙女、藤原竜也の演技に興味がある。早乙女の舞台も観劇し「立ち回り、刀さばきがすばらしい」と、感激した。

 「ドラマもよく見ますね。沢尻さんの『ファースト・クラス』も見ています。沢尻さんが醸し出す危険な感じ、攻めていく雰囲気が好きで、家に写真集も飾ってありますよ(笑い)」

 沢尻の8年ぶり主演ドラマとして話題の番組も見逃さない。今の役柄に直結しなくとも芝居、演技、存在感など参考にする。過去2作は定評のある歌、ダンスが軸。今回は芝居が中心だ。

 「今回は歌にも踊りにも頼れない。芝居を磨く絶好のチャンス。いつか、嫌になるくらいセリフをしゃべってみたいと思っていたので、このタイミングでのストレート・プレーは、運命的かも。本当に!」

 今作はロシア作家チェーホフによる戯曲「かもめ」の舞台化で、宝塚では初上演。19世紀末、帝政ロシアを舞台にし、劇作家志望の青年の生きざまを描く。

 「台本はほぼ原作通り。一気に10行を超えるセリフも珍しくなく、すごい量。私、家で何かをしながら覚えるので、掃除しながら覚えました。夜中まで声に出しながら、掃除していたので、おかげで今、めっちゃ、家がキレイ。もう掃除するところがないぐらい」

 笑うと、まだ少年っぽさも残る。それと裏腹な強さ、たくましさもある。父は元サッカー日本代表で、なでしこリーグ・伊賀FCくノ一の浅野哲也監督だ。

 「(父はバウ初主演に)与えられた使命をこなせるように頑張れと。心配はしているでしょうけど、あまり細かくは…。温かく見守ってくれている感じです」

 食事や運動、ストレッチなど、体調管理の助言も受けている。

 劇団は4月に100周年を迎え、式典やセレモニーが相次いだ。先輩スターが黒えんび服で踊る姿に男役の原点を再認識した。

 「やっぱり宝塚らしい男役になりたい。黒えんび服を着て、リーゼントでキメて大階段で踊る。芯の通った男役に、あらためてあこがれを感じました」

 「伝統」へのあこがれが、旬に敏感な次世代スターを育てている。【村上久美子】

 ◆バウ・ミュージカル「かもめ」~アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ著「かもめ」より(脚本・演出=小柳奈穂子氏) 世界で舞台化されているが、今回、宝塚では初めて。19世紀末、帝政末期のロシアを舞台に、湖畔の屋敷に住む劇作家志望の青年トレープレフと、女優を目指す少女ニーナ(城妃美伶)との恋愛を軸に描く。

 ☆礼真琴(れい・まこと)12月2日、東京都出身。東海大浦安高を経て09年4月「Amour それは…」で初舞台。星組に配属。10年「ロミオとジュリエット」で、セリフはなく踊りだけで表現する「愛」に抜てきされた。昨年夏の「ロミオとジュリエット」、今年初めの「眠らない男-ナポレオン・愛と栄光の涯に」の新人公演で連続主演。身長168センチ。愛称「まこっつぁん」「こと」「どんちゃん」。