梅雨が一瞬で終わったと思いきや、ジメジメした日々が続いております。これから夏が本番化するにあたり、足並みをそろえるように7月クールのドラマもスタート。民法はじめ地方局やBSなど含めればその数60本超。令和4年、改めてすごい数のドラマが作られています。

そこで今回おすすめしたいのは金曜ドラマ「石子と羽男-そんなコトで訴えます?-」。有村架純、中村倫也がダブル主演し、変わり者だがどこか似た者同士の成長する姿を描く。弁護士とパラリーガルといえば、「99.9-刑事専門弁護士-」や「リーガル・ハイ」など名作が多い中、初回の放送を見た限りこちらも期待できそう。いわゆるバディものだが、有村と中村の相性がいいと思われ、さらにヒットメーカー・塚原あゆみの演出もさえわたり、今後の展開に大いに期待したい。

さて話は変わり、芸人が演技をすることについて考察してみる。よく名前のあがる原田泰造、児嶋一哉、塚地武雅あたりは、本業よりも活躍しているのかもしれない。もともと俳優志望であったり、コントなどで役を演じていたりと素養があるのは見ていて十分に伝わってくる。

また、しゃべりのプロなのでその点も問題ないとなると、芸人誰もが俳優になってもおかしくない。しかし、ドラマや映画の中にスッとはいれる人もいれば、あくまでもバラエティーで見せているその姿から脱却できなく、どこかコントみたくなってしまう人もいる。向いている人も多いが全員ではない。そう、一言で言えばセンスなのである、と雑にまとめてみる。

そこで今回紹介したいのは、「石子と羽男-そんなコトで訴えます?-」に出演している、おいでやす小田(43)。有村の父親(さだまさし)のご近所さんで、有村に一目ぼれしている。作品自体コメディー要素も多いが、基本法律を扱う緊迫した展開の中、箸休めになるであろうおいしい役どころである。

バラエティーで見せる個性を残しながら、物語の中にスッと入っている姿に感心した。2016年あたりからR-1ぐらんぷりの決勝で見かけるようになり、2020年にはこがけんと組んだ「おいでやすこが」がM-1で準優勝。優勝したマヂカルラブリーと接戦を繰り広げ、一晩にして全国区の人気者となる。

大声でシンプルに突っ込むスタイルはどこか昭和の芸人さんを想起させ、画面に登場するだけで華やかになる。しかし芸達者なこがけんと比べ、キャラクター重視というか積極的にMCをやるタイプでもなさそうにも見え、もうひとブレイクといったところだろうか。

そんな中での俳優としての起用。経歴をみると朝ドラ「カムカムエヴリバディ」にも出演している、そこにきて今回の抜てきをみると関係者内での評判がいいのであろう。最近では東京03の角田晃広がドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」でそうそうたるメンツの中、目立つ演技をしていた。来年には大河が決まっているという。見た目も少し似ているが、こちらも甲高いツッコミを封印?して、俳優としてブレイクする日がくるのかもしれない。本人には「何で!」と突っ込まれそうだが(笑い)。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーに。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。今年は2月に演出舞台「政見放送」を上演、5月20日には最新監督映画「さよならグッド・バイ」が公開された。8月には演出舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ」の製作も決定している。カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営中。