NHK大河ドラマ「麒麟がくる」も、最終回の本能寺の変まであと2話となった。43回「闇に光る樹」(31日放送)の放送を前に、脚本家池端俊策氏(75)が作品と結末への思いを語った。

-光秀と信長の関係性を描く際に意識したことは。

池端 信長は天才肌ですし、感覚的に動く人間です。光秀はそんな信長を危なっかしいと思いつつ、この人の行動力があれば戦乱の世を終わらせられるのではないかと思い、一種の友情関係を維持して一緒にやっていくわけですよね。しかし、最後はこの人では平和な世は来ないと、その信長を殺さざるを得なくなるという非常に悲しい運命になるので、そういう光秀のつらい気持ちを描きました。

-主人公、光秀への思いをお聞かせください。

池端 光秀は僕だと思って書いていました。長谷川博己さんが見事に入り込んでくれたなと思います。光秀は相手が言ったこと、行動したことに反応する“受ける芝居”が多くて、脚本も「…」となっていることが多いです。解釈の仕方や受け止め方など大変難しい役だったかと思います。僕は光秀が長谷川博己さんで大正解だったと思います。

-秀吉や、松永久秀など個性的な登場人物への思いは。

池端 秀吉は、自分を押し殺してはい上がっていかざるを得ない切なさがあるといいなと思って書きました。秀吉役の佐々木蔵之介さんのあの色の濃い演技は、自分の立ち位置をはっきり分かってらっしゃると思いました。松永久秀(吉田鋼太郎)も非常に書いていて楽しかったです。悪党と言われた人ですけど、人懐こくて愛嬌(あいきょう)があって面白いんです。戦国時代は戦いばかりで、本質的には暗い時代だったと思うんです。でもやはりドラマとしては、そういった人間が何を目指したかという夢の部分を描くことで弾んだものにしたかった。

-全44話を書き終えて。

池端 物語の後半は、1人1人の心理の葛藤が、書いていて面白かったです。緊張感を強いられる中で人間を見つめるという作業はこのドラマの中でできたかなと思っています。

-作品を通して伝えたかったことは。

書いていて楽しい世界だったなということです。戦いに明け暮れる世界の人たちでしたが、それでも楽しかった。「世の中は美しいか醜いか」という伊呂波太夫(尾野真千子)のせりふにもありましたが、みんなどこか美しいですよね。それが救いでもありました。また、夢を持って生きることの大切さを描けたのもよかったです。今はまだまだコロナ禍でつらい世の中ですが、なおさら夢は持ち続けなきゃいけないと思います。

◆第43回「闇に光る樹」 正親町天皇(坂東玉三郎)の譲位を強引に進めようとする信長(染谷将太)。その責任者を命じられた光秀(長谷川博己)は、不思議な夢に毎夜うなされるようになる。京にやってきた帰蝶(川口春奈)に「こんなとき斎藤道三ならどうしただろうか」と尋ねると、帰蝶の口から意外な答えが返ってくる。