作家よしもとばなな氏(50)の小説「海のふた」が映画化され、女優菊池亜希子(32)が主演することが11日、分かった。海辺の町を舞台に2人の心の再生を描く物語。原作は03年から04年まで読売新聞で連載された後、06年に書籍化された。ファンの間で最高傑作の呼び声も高い話題作だ。

 菊池が演じるヒロインまりは、都会生活に疲れ、静岡・西伊豆にある実家に戻り、かき氷の店を始める。そこに、まりの母親の友人の娘で、祖母を亡くしたばかりのはじめが同居することになる。女性2人の心の交流を通して、日常の切なさや喜びを描く。はじめは三根梓(23)が演じる。10年公開の青春映画「ソフトボーイ」が話題となった豊島圭介監督(43)がメガホンをとり、撮影は西伊豆オールロケで行われ、既に終えている。

 菊池は「女の子の夢物語ではなく、日々の営みに対する賛歌のような映画。見たらきっと、体の中にある大切な何かがキンと響くはずです」と話す。役柄については「私自身と共感という言葉では収まらない重なり方をしていました。心の奥の深い部分でしっかりとつながっていたような気がします」という。

 はじめは、顔にやけど痕もあり、心にも大きな傷を抱えている難役。三根は「体現しようとするとなかなかうまくいかず、すごく苦しく悩みました。監督とたくさん話をしたり、菊池さんのお芝居をしっかり見て感じたものを大切にするようにしました」と話す。

 よしもと氏は映画化について「私の第2のふるさと(静岡県伊豆市の)土肥が美しく撮られていて、いつも家族で歩いた場所で、すばらしい人たちが真摯(しんし)に演技をしている。それだけで幸せ」とコメントしている。主題歌は女性歌手蘭華が歌う「はじまり色」。映画は今年夏公開予定。

 ◆菊池亜希子(きくち・あきこ)1982年(昭57)8月26日、岐阜県生まれ。高校時代からモデルとして活動開始。映画は10年「森崎書店の日々」や12年「よだかのほし」に主演。最新主演作は「グッド・ストライプス」(5月30日公開)。文芸春秋「CREA」や宝島社「リンネル」などでエッセー連載中。172センチ。血液型B。