次期NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(来年4月スタート)で再出発する女優がいる。阿部純子(22)だ。かつて「吉永淳」の芸名で活動したが、昨年夏から約1年間、米国に留学して、語学や演技を学んだ。帰国に合わせて所属事務所も移籍して心機一転、海外への発信力のある女優を目指すことを決意した。

 スレンダーな体形と大きな瞳、エキゾチックな顔立ちが印象的だ。昨年5月、河瀬直美監督(46)がメガホンをとった主演映画「2つ目の窓」がカンヌ映画祭に出品され、国際映画祭に初参加した。これが刺激となった。「世界的に有名な女優さんが登壇されているのを見て、これはすごいなと感じました。でも英語だから、何を言っているか分からなかった。力不足を感じました。もっと飛びたいと思って、留学することを決めました」。

 当時の所属事務所をやめて、芸能活動から離れた。独学で英語を学び、大学が夏休みに入った昨年8月に米フロリダへ飛んだ。その後ワシントンに移り、現地の指導者の勧めもあってニューヨーク大演劇科に入学した。米国人クラスメートと寮生活を送り、発声練習や即興演技など稽古に励んだ。大手芸能プロダクションのアミューズのスタッフと出会い、今年8月の帰国に合わせ、女優として再スタートを切ることを決意。アミューズに所属した。芸名も本名にした。「留学を通して、自分が勝手に『日本人』ということを意識しすぎていたことを思い知らされました。国籍も何も関係ない。枠にとらわれず、いろいろな仕事をしていきたい」。

 現役の慶大3年生。学業と芸能活動を両立させながら、復帰後の初仕事も決まった。NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」だ。オーディションを勝ち抜いてつかんだ。高畑充希(23)演じるヒロインの友人役で後に一緒に仕事をすることになる重要な役どころ。「留学中、現地でお世話になった日本人家族の家で『マッサン』を見ていました。朝ドラってやっぱり日本の象徴というか、看板だと思っていたので、自分が出られるなんてとてもうれしいです」。

 夢は、大きく膨らんでいる。「米国に行って、逆に日本のいいところをたくさん知りました。日本の良さを詰め込んだ作品にたくさん関わっていきたい」。日本と海外を行き来する仕事をしている姉の姿に刺激も受けている。「国境を越えて、海外の映画館でも見てもらえるような、世界的な作品にいつか出てみたい」。いよいよ始まる朝ドラの収録がステップアップの第1歩となる。【横山慧】

 ◆阿部純子(あべ・じゅんこ)本名同じ。1993年(平5)5月7日、大阪府生まれ。小学生で芸能界入り。中学時代はファッション誌モデルなども務めた。10年「リアル鬼ごっこ2」で映画初主演。ドラマは12年の日本テレビ系「理想の息子」など。昨年の主演映画「2つ目の窓」でサハリン映画祭主演女優賞。特技はピアノとフルート。161センチ。血液型A。