第37回ヨコハマ映画祭の各賞が5日、発表された。主演男優賞は渋川清彦と永瀬正敏、主演女優賞は綾瀬はるか、助演男優賞は光石研、助演女優賞は河井青葉、最優秀新人賞は広瀬すずと杉咲花、藤野涼子が受賞した。作品賞は神奈川県鎌倉市を舞台とした是枝裕和監督の「海街diary」が受賞。是枝監督は、「恋人たち」の橋口亮輔監督とともに監督賞も受賞。「海街diary」は撮影賞の瀧本幹也氏含め作品、監督、主演女優、最優秀新人の最多5部門を受賞。また「お盆の弟」は、単館系の作品ながら脚本賞の足立紳氏(「百円の恋」も対象作品)含め4部門を受賞した。

 「お盆の弟」は、北野武監督の91年「あの夏、いちばん静かな海。」93年「ソナチネ」など話題作の助監督を長年務めてきた、大崎章監督の10年ぶり2作目の映画で、大崎監督と足立氏が07年から企画を進めてきた両者の自伝的作品だ。売れない映画監督タカシ(渋川清彦)が、高校時代からの親友の売れない脚本家・藤村(岡田浩暉)と日々、2本目の映画の構想を練り、再起を目指す物語。7月25日の公開後、作品性の高さが口コミで広がり、小さな作品ながら全国各地で上映が続いている。

 大崎章監督は、日刊スポーツの取材に“4冠”の喜びを口にした。

 「8年前、甘っちょろいどん底にいた大崎章と脚本の足立紳の生活を描いただけの映画がこんな結果を出すとは思いもしませんでした。一読してゲラゲラ笑える台本を書いてくれた足立と、その台本に血肉を与えてくれたすばらしい俳優陣と、形を作る土台をくれたプロデューサー、そして貧しいはずの現場を豊かな現場にしてくれた全てのスタッフに感謝しながら、喜びをかみしめています。4部門の受賞は監督として最高にうれしいです」

 他に「トイレのピエタ」の松永大司監督が森田芳光メモリアル新人監督賞、映画「バクマン。」の製作スタッフ・キャストが審査員特別賞、樹木希林は特別大賞を受賞した。

 日本映画ベストテンも発表された。(1)「海街diary」(2)「恋人たち」(3)「百円の恋」(4)「バクマン。」(5)「野火」(6)「あん」(7)「岸辺の旅」(8)「トイレのピエタ」(9)「お盆の弟」(10)「さよなら歌舞伎町」(次点「ビリギャル」)

 表彰式は来年2月7日に横浜・関内ホールで開かれる。