宝塚歌劇団の小川友次理事長(60)が12日、兵庫県宝塚市内の同劇団で、創設103年“新世紀3年目”の今年は、「ホップ・ステップ・ジャンプでジャンプの年」と位置づけ、大劇場公演以外でも、積極的にライブビューイングを実施し、ブランド力をさらに高めたいと語った。

 今年7月に退団する雪組トップコンビ、早霧(さぎり)せいな、咲妃(さきひ)みゆ主演の愛知・中日劇場公演「星逢一夜」の週末公演を候補に、すでにライブビューイングの準備に入っている。

 宝塚ではこれまで、トップスターのサヨナラ公演・東京千秋楽を中心に、映画館などで全国中継するライブビューイングを行ってきたが、最近では、人気作の本拠地公演でも、東京千秋楽の映画館中継を積極的に手がけている。そこに今年からは、本拠地作以外の外部劇場公演、全国ツアーへも拡大させていくことを決めた。

 「正直に言えば、100周年を過ぎて、101年目からは厳しいと思っていた。ところが、皆さまの支えもあり、昨年(16年)まで3年連続で、宝塚、東京の両劇場は集客率100%を超え、外部劇場をあわせると、3年連続270万人以上の動員を達成できました。100年の歴史でも初めてのことです」

 小川理事長は、100周年以降も順調に客足を伸ばし、昨年は過去最高集客を果たしたことで、大きな手ごたえを感じ、ブランド力をさらに高める必要性を痛感している。

 15年4月の就任以降は、大劇場公演の演目発表を早め、最近では8カ月前を基本に本拠地作を発表している。さらに、新作などの場合は、公演詳細が分かりにくいため、製作発表を定例化。製作発表をある種の“デモンストレーション公演”とし、ファンニーズにこたえてきた。

 若手、中堅の演出家を積極起用することで、ベテランへの刺激にもなり、昨年は「エリザベート」など代表作を持つ小池修一郎氏が、アニメ原作の「るろうに剣心」を演出するなど、制作陣、スタッフの競争意識も強化し、ソフトの充実も図ってきた。

 台湾公演も経て、海外からのファン、集客も増え、相乗効果を生み、劇団史上初の「3年連続集客100%以上、動員270万人超え」達成にいたった。

 その海外でも、ライブビューイングを積極的に仕掛けたいといい、今後は「劇場にまでは…というライトなファンを取り込み、コアなファンへつなげていきたい」とも話す。

 そんなライトなファンへ向けては、劇団の顔となるトップスターが重要な入り口を担うが、そのためには「歌、踊り、芝居の技術はもちろんだが、今まで以上に人をひきつける人間性が重要になってくる。1人の人間としての総合力が大事」とも考えている。

 月組は9年目の若きトップ珠城(たまき)りょうが就任し、現在、宝塚大劇場で「グランドホテル」の本拠地お披露目公演中で、星組は、抜群のトーク力を発揮する大阪出身の新トップ紅ゆずるが、東京国際フォーラムでトップ初主演作「オーム・シャンティ・オーム~恋する輪廻」に臨んでいる。

 「トップそれぞれ個性があっていい。キャラが立っていることも必要」と言い、その一方では「一歩、(劇団から)外へ出たときの謙虚さ、最近忘れられがちな日本人の心を大事にして育てていきたい」とも。

 劇団伝統の「清く正しく美しく」の精神は「最近の日本から失われかけているからこそ、お客さまは宝塚にそれを求めている」と、あくまでも原点は守りつつ、タカラヅカ新世紀の改革を進めたいという。