7年前に舞台を引退後、「(ビジョンは)白紙だった」と笑うが「すごく充実した老後になりました」という。67歳で出演した映画「折り梅」で認知症になる母親を演じた。「その辺から面白い役をいただけるようになった」。その後も06年「佐賀のがばいばあちゃん」や08年「おくりびと」などの映画で個性的な役と出合った。一時は悩みも抱えた女優の仕事だが、今は充実感でいっぱいだ。「私は趣味もなくて、実生活で楽しいことってほとんどないんですよ」と笑うが、「役をもらってその役になって現場に行くのは本当に楽しい」という。「そのチャンスを今でもいただけているのは一番の幸せ。続けてきて良かった。続けさせてもらってるって感じですけどね。今は祈るような気持ちで『誰か私に楽しい役をください』という感じ。何か面白い役があるんじゃないかと思ってそれを楽しみに日々を過ごしてます」。

 続けていれば、いつか花は開く。遅咲きの81歳は、まだまだ貪欲だ。【杉山理紗】

 ◆吉行和子(よしゆき・かずこ)1935年(昭10)8月9日、東京都生まれ。54年劇団民芸に入団。69年に退団後、74年舞台「蜜の味」で紀伊国屋演劇賞個人賞受賞。映画は「御法度」「佐賀のがばいばあちゃん」「おくりびと」「燦燦(さんさん)」などに出演。79年「愛の亡霊」14年「東京家族」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞受賞。

 ◆「家族はつらいよ2」 吉行和子、橋爪功演じる夫婦とその3きょうだい夫婦によるドタバタ人情劇。橋爪演じる父に運転免許を返納させようと家族が画策する一方、父は運転中、旧友と40年ぶりに再会。旧友と楽しく酒を交わした翌朝、とんでもない出来事が一家に降りかかる。西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優らが共演。